8.アドバイザー会議報告

(1)メンバー

(2)令和3年度の取り組み

本年度はアドバイザー会議をオンラインで8月4日に開催した。出席者は以下の通りである。
(学外委員)
   泉山 茂之   信州大学 山岳科学研究所長
   中山 隆治   環境省 東北地方環境事務所長
   増澤 武弘   静岡大学 防災総合センター客員教授
   渡辺 悌二   北海道大学 球環境科学研究院教授
(学内委員)
   津村 義彦   センター長
   石田 健一郎  副センター長
   呉羽 正昭   副センター長
   出川 洋介   山理解部門長(菅平高原実験所長)
   清野 達之   山管理部門長(八ヶ岳演習林長)
   立花 敏    山活用部門長
   門脇 正史   筑波実験林長
   山川 陽佑   井川演習林長
本会議では筑波大学山岳科学センターの2020年度の活動報告を行い、各委員から様々な意見を頂いた。頂いた意見を十分に取り入れて今後の当センターの活性化や発展のために尽くしていく予定である。
以下に以下にその内容を記載(議事メモ)しておく。 〇 印は外部委員からの質問または意見、△印はその質問への回答である。

(1)全体説明
津村センター長から、資料2に基づき説明があり、外部委員から大要次の意見があった。
〇活発な活動をされていることに感心しているが、説明の中にあった山岳科学学位プログラム(修士)の定員を教えてほしい。
△定員は研究科で管理しており、学位プログラムの募集定員は20人である。6~7割の入学者で少し足りない状況である。
〇定員確保(入学者増)に向けた取り組みを教えてほしい。
△広報に力を入れる方針で、動画を作成し公開している。また、著書「山岳科学」(教科書として出版)を関係機関に贈呈するとともに、パンフレットを送付(約400機関)して周知を図っている。
〇社会人の取り込み(リカレント教育など)も必要であるが、時間と授業料の問題がある。奨学金をどのように考えているか、またオンラインでかなりの部分ができるとか取り組みあれば教えてほしい。
△奨学金については未検討であるが、実習等への参加に当たっては旅費を支援している。必修科目については全額補助、選択必修科目については半額補助を行っている。海外実習についても半額補助を計画している。(昨年度はコロナ禍で未実施)
△社会人はほぼ毎年入学者がおり、次の概算要求では、東京にいながらほぼオンラインでできる仕組み(有給休暇の範囲内で修士を取れるようなもの)を検討している。
〇連携を組んでいる各大学学位プログラム(静岡大学、山梨大学、信州大学)の状況を教えてほしい。
△静岡、信州大学がそれぞれ10数名、山梨大学が数名(2名前後)で筑波大を合わせて50~60人程度である。
〇 以前地方創世の仕事をしていたことがあるが、自治体の職員を研修として2年間預かり、半日仕事をしながら、自治体の事業を研究材料にして研究と仕事を行いながら修士を取らせるプログラムがある。山岳科学の場合、砂防や林業も実学として当てはまると思われるので、公務員やコンサルタントの研修への活用も考えられるのではないか。

(2)ステーション説明
<菅平高原実験所>
出川所長から、資料4-1に基づき説明があり、外部委員から大要次の意見があった。 
〇一昨年あたりから菅平の日本ジカの問題が提起されているが、主要課題の中に入っていなかったようであるが、なにもされなかったと理解してよいか。
△主要課題の獣害対策として取組んでいるが、「シカ」の表現が出ていないので、表現を工夫していきたい。
〇シカ被害は、食べられ始めてからの対策では遅い。南アルプスの高山草原の被害もそうであった。無くなる前に適切な処理をしないと間に合わなくなるので、次の課題の中でアピールをお願いしたい。
〇重要課題の3つ目にある菅平湿原は全国の湿原の中でも忘れられている状況にある。菅平は上信越国立公園のはじに位置しており、東京に近く利用の多い国立公園として設定されているが、保護されている状況にない。菅平の特殊性として国立公園としての利用よりもスポーツの利用が盛んになっている。高原野菜の工作による土砂流入も問題であると考える。中央部の川の新設なども影響している。重要な湿原が保護されていないので、ぜひ信越環境事務所とも相談いただきながらより良い事業とか地域での取り組みに繋がるよう研究を生かしてほしい。
△ いろいろな利権や思惑が絡み合うと思われるが、関係方面と協力しながら展開していきたい。
〇年次報告書をCodiMDで作成されたことは非常に良い取り組みである。また、鳥獣の問題などは簡単な問題ではないが、地域(上田市など)との協定を結ぶとか、地域の人々と関わりながら信頼関係を築いていくことは受託研究や寄附にもつながるので積極的に取り組んでほしい。
〇菅平湿原の近くには、臼窪湿原と池之平湿原があるが、ここはもっと忘れられた存在である。特徴的な湿原でもあるので目を向けてもらえるとありがたい。
〇コロナ禍において人数制限をしながら実習をしているとのことで大変な苦労があると思うが、実習のオンライン化について一部コンテンツを公開されているようであるが、ノウハウを説明してほしい。
△実習のオンライン化はずいぶん議論して一例実施した。内容は、データを配布して統計解析をさせ、グループディスカッションをさせるなどの取り組みをしたが演習との差別化が難しく、実習のオンライン化は進んでいない状況である。
むしろ、宿泊棟の改修を行い受け入れ人数を増やす工夫をしている。
△重点課題の「山岳地域における双方向ミラーワールドの構築」は遠隔ロボットを活用した研究で、自宅に居ながらにして自然観察体験ができるような研究プロジェクトを作る構想も検討中である。

<八ヶ岳演習林>
清野林長から、資料4-2に基づき説明があった。

<井川演習林>
山川林長から、資料4-3に基づき説明があり、外部委員から大要次の意見があった。
〇演習林のスタッフが減ったとのことであるが、ジオツアーのアドバイザーなど、紹介されたもの以外にも何年か前に比べるとずいぶん広く社会貢献をされていると思う。
〇この地域はリニア問題を避けてとおれない。残土(発生土)の積み上げの危険性など砂防上重要な問題があるが、地元研究者が足りない状況でもあるのでぜひ参加してほしい。
〇岩石標本も貴重な試料である。エコパークビジターセンターやエコパーク自然の家は定期的に多くの人が訪れるので、一部でもよいので移設して多くの人の目に触れるようにしてほしい。
〇私が以前に提案していたJaLTERに参加していただいたようであり、感謝申し上げる。

<筑波実験林>
   門脇林長から、資料4-4に基づき説明があった。

(3)研究部門説明
  <山理解部門>
出川部門長から、資料3-1に基づき説明があり、外部委員から大要次の意見があった。
〇部門を目標に変えるとのことであるが、詳しく説明してほしい。
△昨年度問題提起され、今まさにイニシアティブ会議を経て運営委員会で4回ほど議論している。これまで部門には二つまで所属することができることになっていたが、新しく出てきた成果が別の部門に近いものが出てきて、辻褄が合わなくなる事態が生じた。そこで各部門に属さずに、従来の地球圏、生物圏、人間圏に所属しながら、出てきた成果を三つの目標(山理解、山管理、山活用)にあげていき、次年度においては、センター内で協力体制とか共同研究ができるシステムとすることを議論している。
〇もともと部門の重複が気になっていて見直すことは大事なこと。重要なことはセン ターの一体感を作ることである。ばらばらに研究をすると個人の報告をホチキスで留めているだけとなってしまう。塊を作れるようにすべきである。
△ご意見のとおりで、そのためにも部門の見直しを図り、重点課題を作り、センターの目玉を作っていく努力をしているところである。
〇自分が参加している山岳科学研究拠点でも同じような悩みを抱えている。各分野のスペシャリストの集まりで、それぞれの分野を生かした切り口から協力し合うなど試行錯誤も必要。
〇地域貢献を前面に出しているが、とても大事なことである。

<山管理部門>
清野部門長から、資料3-2に基づき説明があった。

<山活用部門>
立花部門長から、資料3-3に基づき説明があり、外部委員から大要次の意見があった。
〇茅の研究が順調に進んでいることに安心した。トライアンドエラーでいくつかの企画が進んでいるようであるが競争的資金の獲得に努めていただきたい。
個人の研究、各ステーションの活動は順調に進んでいると思われるので、それぞれがうまくコラボできるように祈念しています。
〇すべての部門に関わることであるが、ばらばら感は否めない。個々の研究が素晴らしいことは理解しているが、単に論文リストを挙げるだけであれば部門はいらない。大事なのは出てきた論文の中身を精査し、どの部分がリンクするのかを解析する作業が必要。そしてそれをどう次の研究計画に生かしていくかが大事である。
△本センターでは、イニシアティブ部門がその役割を担うこととなる。出された意見を参考に今年度の研究計画を見直していきたい。

(4)その他
(津村センター長)
 昨年度のセンターの中間評価ではC判定であった。主たる原因は、大型研究資金(科研費のA以上)の獲得がないこと、論文数が他の組織に比べて少なかったことであるが、いずれも上向いている状況である。今年度の活動成果を踏まえて来年秋に5年間の最終評価を受けることになる。
 本日の報告内容の詳細は、CodiMDに掲載されているので、追加意見があれば事務局までお寄せいただきたい。

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