8.アドバイザー会議報告

(1)メンバー

(2)今年度の取り組み

本年度はアドバイザー会議をオンラインで7月1日に開催した。出席者は以下の通りである。

(学外委員)
   中静 透    森林研究・整備機構 森林総合研究所長
   増澤 武弘   静岡大学 防災総合センター客員教授
   渡辺 悌二   北海道大学 球環境科学研究院教授
(学内委員)
   津村 義彦   センター長
   石田 健一郎  副センター長
   出川 洋介   山理解部門長(菅平高原実験所長)
   清野 達之   山管理部門長(八ヶ岳演習林長)
   立花 敏    山活用部門長
   門脇 正史   筑波実験林長
   山川 陽佑   井川演習林長

本会議では筑波大学山岳科学センターの2021年度の活動報告を行い、各委員から様々な意見を頂いた。頂いた意見を十分に取り入れて今後の当センターの活性化や発展のために尽くしていく予定である。
以下にその内容を記載(議事メモ)しておく。●印は外部委員からの質問または意見、◎印はその質問への回答である。

(1)全体説明

センター長から、資料2に基づき説明があり、外部委員から次のとおり意見があった。
● 重点研究(3件)について、それぞれ研究期間を設けているのか。また、研究内容の見直しなど行われているのかについて教えてほしい。
◎ 現在進行している重点研究のうち、2件については今年で3年目、1件は昨年度組み直しを行い、今年が1年目となる。成果に応じて、更新するかどうかを毎年判断している。大型予算獲得のために進めているため、今年度はアプライしたいと考えている。
●外部資金の応募が非常に盛んであるように見受けられる。申請に際し、センター全体として支援・サポート体制が取られているのか。
◎ センターとしては、個別研究・重点研究という形で予備研究を行えるよう、支援を行っている。科研費等申請の際は、生命環境系全体でチェック体制を取っている。

(2)研究部門のトピック等について

<山理解部門>
出川部門長から、資料に基づき、目標概要等についての説明があった。

<山管理部門>
清野部門長から、資料に基づき、目標概要等についての説明があり、外部委員から次のとおり意見があった。
● “周辺環境と調和の取れた緑化”とは、具体的にはどのような方法で“緑化”を図っているのか教えてほしい。
◎ 「東京クレセントロール」という在来種植物を用いて緑化を図る取り組みである。
● 在来種で緑化することは、主流というよりも“必須”となっている。本取り組みによって成果をあげることにより、広く活用できるデータとなるため、頑張ってもらいたい。
● 生態系サービスについて、伐根し焼却する(カーボンニュートラル事業)ことで、カーボン収支の大きな改善は見込まれるのか。また、山岳地域のツーリズムについて、分析だけではなく対応策も検討しているのかを教えてほしい。
◎ カーボンニュートラル事業については取り組み始めたばかりであるため、これからデータを収集する段階である。山岳地域ツーリズムの対応策については、次のステップとして検討している。

<山活用部門>
立花部門長から、資料に基づき、目標概要等についての説明があり、外部委員から次のとおり意見があった。
● “森林資源を用いた木管楽器管体用素材の開発”とは、具体的にはどのような素材でどのような楽器を開発しているのか教えてほしい。
◎ 現在、取り組みを始めたばかりである。北海道の広葉樹材を用いて試行している。
● “古民家の茅葺屋根上の接合菌”は、どのような役割・活用方法を期待しての調査になるのか、教えてほしい。
◎ 茅葺屋根上に生息している微生物フローラを調査したところ、「クモノスカビ属」が普遍的に分布していることが判明した。この菌は「テンペ」(発酵食品)等に使用されている有用な菌類であるため、産業利用も視野に入れつつ、研究している。
● <山管理部門>および<山活用部門>の取り組みについて、大変興味深い取り組みが多いと感じたが、CodiMD記載の業績数では<山理解部門>が圧倒的に多くアンバランスに見える。これは、それぞれの部門の人数差によるものなのか。数字で見ると(実態に反して)活動度に偏りがあるように見えるため、何らかの工夫をした方が良いように感じる。
◎ 論文がアクセプトされる際、3部門のいずれかを選択して登録しているが、その際<山理解部門>を選択することが多いことが要因のひとつであると考える。今後、3部門の在り方についても、検討していきたい。

(3)ステーションのトピック等について

<菅平高原実験所>
出川所長から、資料に基づき説明があり、外部委員から次のとおり意見があった。
● 乾燥化等により、湿原の維持管理が困難な状況になってきている。湿原の管理、特に生態系の復元に関して全国の手本となってもらいたい。特に復元は大きな課題となっている。手遅れとなる前に、目標に入れて尽力していただきたい。
◎ 湿原の保全は、各分野が連携して取り組める良い課題となっているため、協力して取り組んでいきたい。
● SNS等アウトリーチに関して、熱心に取り組んでいる印象を受けたが、専門で担当されている方がいるのか。それともボランティアの方が中心となって取り組まれているのか。
◎ 3名いる技術職員の内、1名が広報普及担当として専念して従事している。

<八ヶ岳演習林>
清野林長から、資料に基づき説明があった。

<井川演習林>
山川林長から、資料に基づき説明があり、外部委員から次のとおり意見があった。
● 一人で研究をされているため大変な状況とは思うが、リニア新幹線事業における盛土の安定性や周辺河川の土石流問題等に関して、専門家としての参考意見を静岡県や静岡大学に対して発信する立場となっていただきたい。
◎ 静岡県から話があった際には、連携して取り組んでいきたい。
● 以前、実験棟の食堂と実習室が一緒になっている件について問題視されていたが、その後進展はあるのか。
◎ 計画を立てて予算申請もしているが、なかなか採択されない状況である。引き続き、申請し続けたい。
● 井川演習林では伐採等に関する事業は行っていないのか。
◎ これまでは間伐のみ行っている。鹿や熊を始めとした獣害が多いこと、また傾斜がきついため、林業よりも砂防治山の研究を中心に行っている。

<筑波実験林>
門脇林長から、資料に基づき説明があり、外部委員から次のとおり意見があった。
● リワークデイケアの取組は非常に興味深いが、社会貢献として行っているのか。それとも、医学部の森林的療養効果の分析研究を共同で行っているのか。
◎ 医学部も当方も互いに人員が不足しているため、森林的療養効果の分析研究は行なっていない状況である。

(4)その他

全体を通した助言を各委員よりいただいた。
● <山理解部門>・<山管理部門>・<山活用部門>について、「目標」として掲げるのであればより具体的に表した方がよい。「目標」とするか否かについて再検討を勧める。菅平高原実験所のみで総合研究課題を設けているが、分野横断的な研究を進めるのであれば、センター全体として設けた方が良いのではないか。菅平以外の演習林等は少人数で研究を行っているが、再編も視野に入れて検討した方が良いのではないか。
研究費や研究論文数の増加は評価できる。
●少人数で研究を行っている演習林等では、テリトリーを拡大し、他大学の教員や学生を巻き込んで幅広く研究を進めることで、今後成果が見込まれるのではないか。科研費の30%増は評価できる。
●学生・若手研究員の活躍が頼もしく感じる。センターとしての役割は社会貢献が盛んである印象。今後、留学生の受入も含めて、国際的な展開に期待している。

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