1.MSCの一年を振り返って

 

山岳科学センターは設立後、第一期の5年間が過ぎ、第二期目に入りました。設立当初は手探りの状態でセンターの研究の活性化、各ステーションの目指す方向性、全国共同利用教育拠点の運営などについて議論しながら運営を進めてまいりました。当センターは菅平高原実験所(旧理学部生物学科由来)と演習林(農学部由来)に加えて、地球科学関係の教員が所属する全国でも稀な山岳域を学術的に探究する研究拠点です。菅平高原実験所では生物や環境の情報を集約したフィールドICTミュージアム、遺伝情報を活かした生態系管理や山村振興、菅平高原の農地や湿地生態系の持続的可能性などについて研究しています。井川演習林では南アルプスの自然環境を活用した砂防、水文などの山地保全学研究と野生動物の保全管理技術などの研究を行っています。また、八ヶ岳演習林では地域に根差した林業と生物多様性保全、人間活動と高原の植物種の保全研究などを行っています。筑波実験林では、里山環境の保全管理を主体に、学内フィールドとして樹木の産地試験などの研究に取り組んでいます。このように各ステーションの方向性が明確になり、それぞれの地域にあった研究を推進しています。第二期目の5年間もこの研究方針を継続して、各ステーションでの研究の活性化を行っていきます。スタッフの努力もあり、このところ複数の大型予算が採択され、活発に研究が続けられています。

 また、全国共同利用教育拠点事業「ナチュラルヒストリーに根ざした山岳科学教育拠点」も第三期目に入り、コロナ禍の混乱も過ぎ、公開実習、受託実習や研究指導が行われており、外部の利用者も増加傾向にあり、順調に事業が継続できています。また、この事業は学内外の予算を獲得しながら限られた予算を有効に活用して利用学生に快適に実習や研究を提供しています。

 研究の活性化だけでなく、多くの公開実習を通じて、各ステーションの特徴を活かした日本で唯一の山岳科学の総合的な研究フィールドを今後も目指して行きたいと思います。次年度も教職員一同、教育と研究に邁進して参りますので、皆様のご指導とご鞭撻をよろしくお願いいたします。

山岳科学センター長 呉羽 正昭

 

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