山岳科学センターの3つのミッション(山岳科学の確立、山業創生、人材育成)達成のために、以下の6つの重点項目について取り組んでいる。
1. 研究力強化に向けた体制整備については、これまでに教育拠点経費による若手助教(井川演習林へ配置)、戦略的分野拡充による准教授(菅平高原実験所へ配置、八ヶ岳演習林兼務)、砂防・防災分野准教授(つくばキャンパスへ配置)、国際テニュアトラック若手助教(つくばキャンパスへ配置、イギリス留学)、昆虫分野の若手助教(菅平高原実験所へ配置)を採用してきた。また生態系生態学の准教授を教授へ昇任させた。
2. 研究力と連携力強化に向けた資金獲得については、学内の戦略イニシアチブについては継続獲得ができているが、科学研究費補助金の基盤研究(A)以上の大型研究費については、2023年度に基盤研究(A)1件、学術変革領域研究(A)1件が採択された。国際化に関しての海外研究ユニット招致のための資金要求も概算要求に組み込んでいる。またJSPS研究拠点形成事業等にも継続的に申請を行ない、2023年度に採択された(アジア・アフリカ学術基盤形成型B)。その他山業創生に繋がる資金として、川上演習林の更新伐事業の補助金は継続して獲得できている。登録有形文化財である大明神寮を適切に保存、有効活用するための資金として文化庁の補助金も獲得できた。
3. 各フィールド施設の特色を生かした拠点化による魅力的なフィールド整備については、井川演習林については国土交通省、林野庁、静岡市、静岡県等との連携を強化して、砂防・防災研究拠点化に向けて研究機器や基盤データの充実を図っている。菅平高原実験所については生物多様性の教育研究の強化のために若手助教(昆虫分野)を採用した。八ヶ岳演習林については菅平へ配置した分子生態学を専門とする准教授を兼務として、研究の活性化を図っている。また川上演習林の更新伐事業については更新伐による生物多様性影響評価のモニタリングを行なっている。菅平高原実験所と八ヶ岳演習林は観光地としてのポテンシャルがあるために地元自治体との連携を図っている。
4. 外部機関との連携力強化による山業関連事業の積極的な展開については、上田市および長野県環境保全研究所と連携協定を締結して地元貢献、研究力強化などを行なっている。本学と山梨大学、信州大学、静岡大学、林野庁関東森林管理局及び同中部森林管理局で連携協力に関して協定を締結し、調査研究や技術開発等について協力して取り組んでいる。また、菅平高原実験所の登録有形文化財「大明神寮」については文化庁補助金を獲得して保全計画を策定した。2021年度には、静岡県と当センターで南アルプスの保全に関して連携協定を締結し、これについて静岡県で南アルプス学会が設立され当センターからの参加を引き続き行なっている。南アルプスのシカ捕獲試験については引き続き静岡県と連携して進める予定である。JAPIC、全国山の日協議会等、産業界とはオンラインではあるが打ち合わせを継続している。
5. 海外ユニット招致や定期的な国際シンポジウム等による国際展開については、継続して海外研究ユニット招致に向けて努力を行なっている。また国立台湾大学(台湾)、ガジャマダ大学(インドネシア)とは教育や研究の連携を強化するために連絡を継続して行なっている。コロナ禍が収束したら、共同研究、海外学生実習を加速して行えるように準備をしている。さらに、二国間交流事業でイタリア(CNR)との共同研究「気候変動下の森林保全に向けた森林樹木の標高に沿った環境適応および平行進化の解明」を進めている。
6. 教育関係共同利用拠点事業については、コーディネーター助教を井川演習林に、拠点支援員をつくばに配置して、フィールドの教育研究環境の向上に勤めている。
1. 研究力強化に向けた体制整備については、大学全体の定員削減のため新規採用は厳しい状況であるが、菅平高原実験所では昆虫系統学の特任助教1名を雇用した。また行動生態学助教を准教授へ昇任させた。
2. 研究力と連携力強化に向けた資金獲得については、今年度は学内の戦略イニシアチブについては継続獲得ができた。また川上演習林の更新伐事業の補助金は継続して獲得できている。2024年度、大型研究資金については環境省総合推進費(代表)が1件、科学研究費基盤S(代表)が1件採択された。
3. 各フィールド施設の特色を生かした拠点化による魅力的なフィールド整備については、菅平高原実験所では昆虫系統学の特任助教1名を雇用し生物多様性研究の強化を行なった。また、「NPO信州草原再生」を設立し、シンポジウム「後世に受け継ぎたい草原の価値」を実施した。井川演習林ではシカ捕獲試験を静岡県と連携して引き続き行なった。筑波実験林では2つの産地試験林設定により、8大学などとの共同研究が実施できた。
4. 外部機関との連携力強化による山業関連事業の積極的な展開については、2024年9月に株式会社モンベルとアウトドア活動等の促進を通じた地域の活性化と山岳科学の教育と研究の質の向上に資する連携協定を締結した。今後は、具体的な連携について協議・整理を進める。
5. 海外ユニット招致や定期的な国際シンポジウム等による国際展開については、ガジャマダ大学(インドネシア)とSATREPSプロジェクトを実施している。シンポジウムとしては、環境系学位プログラムと合同で「2100年の山や森を守るために」を開催した。また、JSPS研究拠点形成事業で「山岳地域における遺伝的多様性データベース構築にむけた先端研究教育拠点の形成」と題した国際ワークショップを開催し、海外5カ国から15名を招聘した。
6. 教育関係共同利用拠点事業の利用実績は、コロナ禍が収束したためコロナ禍以前のレベルにほぼ回復し、18の公開実習(学部生向け9、大学院生向け9)を実施した。受託実習については、39実習を受け入れ、研究指導・利用も他大学・研究機関で25課題、学内で39課題を受け入れた。