概要
- ●演習林部門は大きく3箇所に分かれており、それぞれに教員と技術職員が勤務しています。
(1)筑波キャンパス内の北部地区には筑波実験林があり、3.4haの実験圃場と隣接する2.2haの植物見本園、兵太郎池の東側を管理しています。
(2)長野県の野辺山には八ヶ岳・川上演習林事務所があり、野辺山高原恵みの森(事務所構内、14ha)と2kmほど北西にある八ヶ岳演習林(80ha)、事務所から4kmほど南東にある川上演習林(189ha)の3団地を管理しています。
(3)もう1箇所は静岡市の北部、南アルプス山麓にある井川演習林(1,760ha)です。急峻な地形の奥深い山地のため、事務所は10数キロ南の集落内にあります。

筑波実験林 |
---|
- ●筑波実験林は筑波キャンパス北地区にあり、計3.4haの3ヶ所の圃場からなります。標高は23〜27mと低く、土壌は腐植質に乏しい火山灰の関東ロームが大部分で、地表下2m前後に粘土層があります。筑波実験林は隣接する植物見本園(2.2ha)の管理も担っています。
- ●1973年に「筑波苗畑」として開設され、1990年代半ばまでは大学構内の緑化事業や植物見本園の樹木養成を行ってきました。現在では、圃場は苗木の養成だけではなく、かつて里山に広く見られたクヌギやコナラなどの雑木林を再生し、きのこ用の原木として利用しながら持続的に管理することを目指しています。実験的な試みも含めて教育研究用フィールドとして活用してほしいという意味も込めて、名称も2006年に「筑波実験林」と改めました。
- ●植物見本園は研究・教育教材や憩いの場の提供を目的に1994年に開設され、国内産樹木類を主体に約300種が植栽されています。隣接する筑波実験林や兵太郎池とともに筑波キャンパス内でもっとも自然の豊かなエリアを形成しており、樹木や野生動物、きのこ栽培、測量などの実習に使われているほか、散策路としても多くの人に利用されています。
八ヶ岳・川上演習林 |
---|
- ●八ヶ岳・川上演習林事務所(通称「八演」)は、野辺山高原恵みの森、八ヶ岳演習林、川上演習林という3つの場所(団地)を管理しています。
- ●野辺山高原恵みの森は、管理棟や宿泊棟などの建物構内ですが、約14haの面積があり、遊歩道等を整備して2015年(平成27年)10月より一般開放しています。樹木園・保存林や草花ゾーン、薪炭林ゾーンなどにゾーン分けされており、実習や林業体験教室などに使いやすい若い林として維持しています。
- ●八ヶ岳演習林は、八ヶ岳の主峰赤岳の東山麓に広がる緩傾斜地にある面積約80haの森林です。ミズナラ、カンバ類を主とした天然生林が大部分を占め(約90%)、その中にハシバミ等の低木が混ざり、林床の多くはミヤコザサに覆われています。林内にはヌマガヤを主とする中間湿原が点在します。周囲は主に戦後に開拓された農地となっています。
- ●川上演習林は関東山地の最西端に位置する面積約189ha、標高1,350〜1,790mの山地林です。大部分がカラマツを主とした人工林であり(約70%)、八ヶ岳演習林とは対照的です。残りの森林はミズナラ、カンバ類、カエデ類を主とする天然生林です。2016年度よりモザイク伐採等によるカラマツ林の更新事業を進めています。
- ●八ヶ岳・川上演習林にはサクラソウ、ヤマネ、ヒメギフチョウ等の希少生物が生息しています。そのような環境を活かして、森林、寄生菌、土壌等を対象とする学生実習や卒業研究、修士・博士論文研究が行われています。川上演習林では複雑な地形を活かした水文学的調査なども行われています。
- ●2016年(平成28年)にはサポーター会「八ヶ岳森の恵み会」が発足し、演習林スタッフと協力して演習林を利用したイベントなどを行っています。
井川演習林 |
---|
- ●井川演習林は、中部日本の赤石山脈に位置します。大井川支流東河内沢流域の上流部を占めており、約1,700haの流域を形作っているのが特徴の一つです。標高の下限は演習林南部、東河内沢沿いの標高900mであり、最高地点は演習林北西の青薙山(2,406m)です。
- ●井川演習林では標高に沿った植生変化がみられます。標高の低いところではミズナラ・カエデ類などの落葉広葉樹を主体とした林で、標高2,000m以上ではオオシラビソを含む亜高山帯針葉樹林となっています。演習林のかなりの部分(1,350ha)は成長した二次林であるため、植生や野生動物に関する研究・教育に適したサイトです。
- ●また、大井川上流域は、中央構造線と糸魚川静岡構造線という日本の2大断層が交差する地域にあります。このため激しい地殻変動の影響を受けて岩盤は脆く崩れやすい地域となっています。演習林内にも5〜10ha前後の大規模崩壊地が複数あり、そのほかにも多数の表層崩壊があり、活発な土砂生産が行われています。また、河川においても土石流が高頻度で発生しています。そのため、演習林内外の研究者により、山岳地域における気象や地形、治山、砂防、防災などに関する調査研究が活発に行われています。