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1.背景(経緯と現状)


【要約】八ヶ岳演習林事務所がある14haの敷地は、苗畑や試験地として使われてきましたが、近年では樹林地はほぼ放置状態でした。ストローブマツやカラマツからなる防風林の樹高が20mを超え、 日照や視界を妨げたり落ち葉を散らすことで近隣に迷惑をかけているだけでなく、直営による管理が困難となっていました。交通アクセスに恵まれているにもかかわらず研究教育での利用は限定的であり、地域住民にもほとんど知られていません。

 筑波大学山岳科学センター演習林は、つくば実験林(茨城県)、井川演習林(静岡県)、八ヶ岳・川上演習林(長野県)の3か所に別れて教育研究のための林地を管理しています。このうち組織としての「八ヶ岳・川上演習林」は、場所としては事務所のある構内(八ヶ岳演習林5林班)と八ヶ岳演習林の本体(1-4林班)、川上演習林の3か所を管理しています。
 この計画は、最初の事務所構内についてのものです。
 「筑波大学農林技術センター演習林 森林管理計画書 2006-2015年度」(以下、現行計画書、冊子体のみ)によると、八ヶ岳演習林の事務所等が所在する約14haの敷地(以下、構内)は、1948年に東京教育大学農学部附属野辺山農場として始まり、1956年には八ヶ岳演習林(1-4林班)の設置に伴って野辺山苗畑(苗木を育てる畑)となりました。八ヶ岳演習林(1-4林班)からはJR小海線や国道141号線を挟んで南東側に2kmほど離れています。極端な寒冷地のため一般的な樹種の植栽は避けた結果、「寒さに強いストローブマツを周囲に植栽し、寒霜害を免れたカラマツ林と共に本地の防風林が形成された。また、建物敷地以外を特定目的の施業の場と位置付け、防風林の保育、試験地の設定、見本林の造成等を行ってきた。」(現行計画書)ということです。
 国土地理院が公開している空中写真によると、現在の構内は1947年当時には樹木のほとんどない原野だったようです。野辺山の厳しい冬を考えると、演習林創設当初の森づくりには多くの苦労があったと思われます。

2006-2015年計画書表紙
 演習林部門ではこの構内を、施設用地も含めて30の小班からなる「八ヶ岳演習林5林班」として管理してきました。30小班のうち18小班は防風林とし、14小班には各種の試験地が設定されてきました(現行計画書の表V-4)が、試験計画書や調査記録が残されていません。現行計画書ではこれらの試験地を見直すことになっていましたが、手つかずのままです。
 現行計画書では構内の管理について「構内施設周辺の整備を継続的に行うとともに、防風林区の間伐、整理伐を実施する」とされていますが、具体的な年次計画は立てられていません。実際に実施されてきたのは限られた範囲での除草のみであり、樹木については一部を伐採実習で利用してきた他には特に管理はされてきませんでした。
村道沿いストローブマツ
ストローブマツの防風林(西側村道沿い)
ストローブマツ防風林内部
ストローブマツ防風林の内部(東側)
 2013年時点での最大の問題は、厳しい気象条件から苗畑や建物を守ってきた防風林のカラマツ(林齢27-65年)やストローブマツ(同じく林齢36-44年)の樹高が20mを超えていることです。苦労の末に立派な林ができたわけですが、高い防風林に囲まれた施設は地域の人にとって近づきがたい存在となった面もあります。また、周辺の道路や畑地の日照を妨げる、成長期の野菜に落ち葉が混入する、東側に位置する国立天文台宇宙電波観測所の視界を妨げるといった問題を起こしていました。さらに、大型林業機械を持たない演習林では直営による伐採等ができなくなっていたことも問題でした。
 一方で、この構内は、JR小海線(八ヶ岳高原線)の野辺山駅から1.3km、徒歩16分の距離に東京ドーム3個分に相当する14haの平地林を有するという恵まれた立地条件にあります。しかし、研究や実習等での利用は限定的であり、地域住民や近隣を通る観光客からもほとんど存在を認識されていないのが実情です。
 そこで、教育研究利用をもっと増やすとともに、地域の人たちにも親しんでもらうことを目的として、新しい森づくりと一般開放を軸とした計画を作りました。本バージョン(Ver. 2.3)は一般開放開始時点での最終バージョンです。

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