2.全体設計と目標
【要約】大きくなった木を順次伐採し、ミズナラを中心とした広葉樹を植栽して短伐期で利用する若齢林へ転換すると同時に、構内を広く一般に開放します。明るい若齢林にして開放することにより、(1) 伐採や新植等を安全に経験できる実習の場や、(2) かく乱依存型生物の保全や研究の場として活用するとともに、(3) きのこや山菜が採れて気楽に散歩できる森として地域に開放し、(4) 将来にわたって直営で管理できる林とします。
防風林を中心に、大きくなりすぎた木を伐採し、明るくて開放的な林へ大胆に転換します。キーワードは「広葉樹若齢林、薪炭林、一般開放、住民参加」です。ただし、すべては伐採せず、一部の林を観察や試験研究用の見本林・保存林として管理して樹木の種数を維持します。
人々が森や木からどんな恵みを受け取ってきたかを体験できる森づくりをイメージして名称は「筑波大学 野辺山高原恵みの森」(略称、恵みの森)とします。
恵みの森計画の目的、ポイントは、(1) 伐採や新植等の森づくり作業を安全に経験できる実習の場、(2) かく乱依存型の森林生物の保全や研究の場、(3) 地域貢献・社会貢献の場、としていっそう利活用するとともに、きのこや山菜が採れて気楽に散歩できる森として地域に開放することにあります。また、もう一つの重要な側面として、(4) 将来にわたって直営で管理できる林として維持するということでもあります。
この恵みの森計画により、林齢50年を超えるミズナラ林と中間湿地を特徴とする八ヶ岳演習林(1-4林班)との差別化を図ることもできます。
(1) の実習地としての利用については、短伐期施業とすることで、苗作りから地拵え(じごしらえ)、新植、除伐、間伐といった一連の施業体験の場をいつでも提供できます。伐採した木も、きのこ栽培用や薪用であれば初心者でも加工できるため、森の恵みを実感しやすいでしょう。さらに、木も小さく、平坦地での作業なので、安全も確保しやすくなります。

南側にある南牧村のベジタボール・ウィズ
「星と宇宙の体験アトラクション施設」

東側の国立天文台(天文台HPより)
後ろに見える林は演習林の防風林
歩道と薪炭林の整備がある程度進めば、地元や他地域の小中高生、あるいは地元の人たちを対象とした林業体験教室や自然観察会などもこれまでよりも開催しやすくなります。
また、森林管理や各種の調査を手伝ってもらう地元のサポーターを募集し、将来的には林業体験教室や観察会で中心になって活動してもらうことを目指します。少し後になりますが、正規の実習だけでは物足りない学生や、日程や所属の都合で実習に参加できない学生などを対象としたサポーターも募って、森づくりに参加してもらいます。
最後に、短伐期での森林管理は、技術職員による直営で続けられるという意義も大きいのです。筑波大学演習林部門の技術職員は少しずつ定員が削られる中で業務の高度化や効率化が求められる厳しい状況ですが、大面積の施業は請負(外注)に出しているため、近年では育林作業に携わる機会が少なくなっています。恵みの森においては、育林作業だけでなく、研究教育支援や地域貢献についても技術職員が林業技術者としての技量を発揮・向上させる機会ととらえて取り組んでいきます。また、それぞれの技術職員の特技や関心を活かした研究テーマを設定して継続的に調査するとともに、科学研究費(奨励研究)の獲得を目指します。