6-4.山活用部門

(1)概要

(2)メンバー

(3)令和2年度の取り組み概要

[守屋]森林における総生産量の推定を行うシステムの構築を目指したカメラによる樹冠葉量計測の検討を行った。理化学研究所内で試行した独立電源観測ノードを改造し樹冠撮影に特化した独立電源観測ノード3基を構築した。この観測ノードは八ヶ岳演習林に仮設置を行い、来年度より観測を開始する予定である。

[呉羽]呉羽が,日本における山岳ツーリズムの特性とその変化について,ヨーロッパアルプスでの例と比較検討し,滞在期間の長さなどを含めてその一般的な性格を指摘した。また,呉羽が大学院生と共同で,長野県東信地域を事例に山岳地域における自然学校とエコツーリズムとの関係について分析した。

[出川]長野県東信地域より、発酵食品生産に有用な真菌類の菌株訳50株を分離培養保管し、特に、接合菌類の有用性について本学の2020年度新技術説明会、産学連携シンポジウムで発表し企業数社との提携を開始した。上田市の発酵文化ネットワークに参加し発酵食品の振興に努めた。山岳科学学位プログラムの卒業生が研究でお世話になった須坂市の味噌生産会社に就職が決まった。

[佐藤]筑波山麓における準絶滅危惧種コオイムシを対象に、生物多様性の保全や自然教育での活用を目的として、標識再捕獲法による野外個体数および生存率推定を行った。その結果、本種の季節消長だけでなく、本種でみられる雄による子の保護行動が野外生存率に与える影響について明らかにした。

[興梠]林政学分野において,国の「緑の雇用」事業(「緑の雇用」新規就業者育成推進事業および林業成長産業化総合対策のうち現場技能者キャリアアップ対策の総称)の社会経済的評価に関する調査研究の一環として,林業経営体に対するアンケートおよび現地聞き取り調査等を行い,林業従事者の能力評価の現状と課題(許銘元・興梠克久),女性林業従事者の採用の現況と雇用上の問題点(久下真輝・興梠克久),自治体における林業従事者育成対策と「緑の雇用」の関係性の整理(興梠克久・山口広子),中堅林業従事者の林業技能修得過程の経営学的,心理学的分析(杉山沙織・興梠克久)を行った。また,全国森林組合連合会に集積されている「緑の雇用」研修生の定着状況データを用いて,生存時間分析の手法により新規林業従事者の定着要因の分析を試みた(杉山沙織・氏家清和・興梠克久)。これらの成果は,全国森林組合連合会編『「緑の雇用」事業評価調査報告書』(2021年3月発行)の中で公表した。

[立花]①製材工場がスクリュ式小型蒸気発電機(MSEG)を導⼊し、余剰蒸気を利⽤して発電することが二酸化炭素排出削減にどの程度寄与するか、製材工場の規模等によって経済的利益がどの程度あるかに関する調査研究を行った。その主な結果として、①MSEGの性能面に制約があるため、単純に規模を大きくしても発電量や収益性は増加しないこと、②発電量はMSEGの年間稼働日数に大きく影響されること、③ルールや手続きの煩雑さという課題はあるが、FITによる売電を行うことにより初期費用回収年数は短くなること、④初期費用回収年数は受ける補助金の割合により影響を受けることを明らかにした。(立花敏・松永佳奈子)
②商業店舗などの非住宅建築における木材利用への期待が高まっている。そこで、コンビニ木造店舗を主たる研究対象として聞き取り調査等を行い、店舗木造化により鉄筋造と比較して建築費用や店舗維持に係る税金を抑えられること、コスト削減という経営戦略の一つとして店舗木造化が選択されていることを明らかにした。(谷野文史・立花敏)
③茨城県内でコンテナ苗生産も始めた全5名の林業用苗木生産者を対象に聞き取り調査を行い、苗木需要に応じて裸苗とコンテナ苗の生産の組み合わせにより苗畑経営を図っていること、今後については労働力確保を重要な課題としており、生産管理が比較的容易なコンテナ苗生産がその課題解決に有効と考えていること等を明らかにした。(斉藤奈央子・立花敏・安村直樹)
④埼玉県西川林業地における原木市売市場を核とした取引や小規模事業体で構成される木材流通を対象に、統計資料調査に加え、域内事業者に対して取扱量、売り方と買い方の変化等に関する聞き取り調査を行い、1990年代以降における従来型流通の市場対応を伴う木材流通構造の変化を明らかにした。(茂木もも子・立花敏)
⑤南箕輪村のセラピーロードを事例に調査研究を行い、その利用の目的や効果を分析した。その結果、健康増進を目的として近隣の地域住民の利用が大半を占め、週に1回以上の定期的かつ継続的な利用が主となっていること、利用により心身の変化をプラスに感じる人が多いことなどが明らかとなり、医療費の削減につながる可能性を考察した。(平嶋美咲・立花敏)

[津村]①無花粉スギの原因遺伝子が同定され、全国のスギ天然林にもある程度の確率で無花粉スギの遺伝子を保有している個体があることを明らかにした。(https://doi.org/10.1038/s41598-020-80688-1)
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/biology-environment/20210216140000.html)。
②スギのRNA-seq法とこれまでに蓄積されている cDNAの塩基配列情報を統合させて、合計で49,795の発言遺伝子を同定し、スギ花粉形成に関わる候補遺伝子を多数検出した。(https://doi.org/10.1371/journal.pone.0247180)
③インドネシアのチーク人工林に植えられている個体の起源がどこであるかをDNAを用いて調査したところ、原産地のミヤンマーやタイなどからきていることを明らかにした。(https://doi.org/10.1007/s11295-020-1427-5)。
④東南アジアのフタバガキ科Shorea platycladosの分子育種のためにゲノムワイドアソシエンション解析を行ったところ、有用形質を支配する遺伝子の特定には至らなかったが、将来の個体の成長や形質のゲノム予測には使用ができる可能性があることを明らかにした(https://doi.org/10.3390/f11020239)。
⑤日本のミズラナやコナラは中部日本にその遺伝的境界があることが分かっているが、その詳細な境界が不明であったので、DNAを用いて調査したことろ、その境界は地形と関連して複雑であることを明らかにした。( https://doi.org/10.1111/1442-1984.12296)。

[廣田]機能強化推進費(重点研究)により、「茅里再生プロジェクト:茅場と茅葺き民家の持続利用に向けた現状把握:筑波山山麓の中山間地域を例に」を立ち上げた。茅里再生プロジェクトは、つくば市および八郷地域を対象に中山間地域の代表である茅里の多面的評価および持続的利用を目指すものである。今年度は、現状把握と各分野にある問題を共有するため、8名のMSC内外の教員、学生、地域住民、および関連団体との連携を深めるとともに、当該地域で行われたワークショップへの参加、代表的な茅場の植生・微地形調査(高エネルギー加速器研究機構、以下KEK)、八郷地区の茅葺き民家での試料採取等をおこなった。その結果、2020年のKEK茅場における茅生産量の低下が特に顕著で、例年の3分の1程度しかないことや良質な茅以外の草本種が優占し始めていることが明らかとなった。これらの成果の一部や関連教員の研究について、フリーペーパー『茅場』vol.4にて、報告する予定である。
(学術集会ポスター発表、生態学会ポスター発表予定)
「機能強化(調査研究)プロジェクト報告 個別調査研究2」参照

(4)業績

査読有 査読無
論文 学術雑誌 17 5 22
紀要等 1 3 4
解説その他 0 18 17
18 26 44
著書 9
学会発表 国際会議 0
国内会議 15
14
一般講演等 22
その他の活動 14

詳細はこちら: 「9.MSC教員業績リスト」

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