6-4.目標:山活用部門

(1)概要

(2)令和3年度の取り組み概要

本年度に山活用に関する多様な分野において着実な調査研究を進めると共に、COVID-19の感染が収束に向かわないで一部の調査研究は次年度に本格的に推敲することを予定している。以下では、山活用部門の本年度の活動の概要を主たる分野に分けてまとめる(文中敬称略)。

【普及】

田中健太は、山岳の自然環境に手を入れて保全し楽しむエコツーリズムイベントとして、根子岳のササ刈りによる山野草復元、峰の原高原のススキ刈りによる「草原をつくろう」、GoGreenプロジェクトin長野への出演などを行った。
 出川洋介は、長野県植物誌のバウチャー標本の寄贈を受入れ、菅平高原実験所の博物館機能が有効活用された。
 また、立花敏と興梠克久がそれぞれ指導する農学学位プログラムの大学院生が林業経済学会学生論文賞を揃って受賞した。

【観光・ツーリズム】

津田吉晃は、長野県高山村からの受託研究として、観光施設予定地の植生調査、特定複数種の遺伝的多様性解析を行い、生物地理学的視点でその地域の植生、遺伝構造を”理解”し、検出された地域固有系統の保全および”管理”を提案しつつ、地域活性化に関連した観光資源としても”活用”されるような研究を行った。また、長野県白馬村の姫川源流の水草バイカモは重要な観光資源であったが、近年急速に消失してしまった。その再生事業に関連した研究助成金を獲得し(クリタ水・環境科学振興財団)、白馬村役場、地域住民らと再生に向けた取り組みに着手した。なお、COVID-19の感染が続く中で、本格始動は新年度を予定している。
 呉羽正昭は、フランスにおけるスキーツーリズムの地域的特徴について、スキーヤー、スキー場、リゾートタウンの特性から分析した。ヨーロッパアルプスにおける気温上昇下でのスキー場存続の可能性について解説した。

【林政・林業】

立花敏は、茨城県常陸太田市の民有水源かん養保安林を事例に県行政担当者及び森林所有者5名に対して聞き取り調査と資料収集を行い、保安林制度と林業経営との関係を分析した。その結果、水源かん養保安林の指定は民有林の持続的林業経営に寄与することを考察した。また、埼玉県秩父地域を事例に森林経営管理制度における広域連携の役割に関する調査研究を行い、広域連携の導入は総じて市町村の業務負担軽減に貢献すると考察した。
また、日本を対象に製材用材の需給に関する計量時系列モデルの構築と推定を進め、供給関数の推定結果が学会誌に掲載された。
 興梠克久は、全国展開しつつある自伐(型)林業の取り組みについて、2000年代前半までの自伐(型)林業に関する研究レビューを踏まえ、2010年代以降の自伐(型)林業研究の論点を整理した。また、事例研究が比較的少ない東北、北関東で活動している自伐(型)林業組織及び自伐(型)林業への新規参入者の一部が参加する厚労相の研修事業参加者を対象に調査を行った。これらから、安全管理、フィールド確保(森林バンク)の面で課題を残しており、地域の調整者(主体形成)については田園回帰との関連、組織における公益部門と経済部門の循環構造が明らかになった。

【木材・木質材料】

小幡谷英一が、NEDO助成事業において木材由来のセルロースナノファイバー(CNF)を建材に応用するための基礎研究を行い、CNFの成形条件が力学性能に与える影響、乾湿繰り返しに伴うCNF成形体の物性変化とその機構、種々の含浸処理によるCNF成形体の物性変化を明らかにした。また、科研費助成事業において、絶滅危惧種に頼らない楽器製造を目指し、国産の森林資源を用いた木管楽器管体用素材の開発を行うとともに、実用化に向けた管楽器の試作を行った。

【微生物】

出川洋介が、まず古民家に関して、1)茅葺屋根上の接合菌類相調査、2)木造建造物保全のための柿渋生産試行を実施し、関与する発酵微生物の調査を開始した。また、発酵食品に関しては、長野県下3社の玉味噌に関わる接合菌類の種同定を進めた。山岳科学学位プログラムの山岳微生物学実習や山岳科学センターの機能強化プロジェクトにおいて、実際にこれらの菌を用いた玉味噌の仕込みを実施した。具体的には、一年間熟成したサンプルについて、今年度の山岳微生物学実習で官能試験を実施した。塩屋醸造に持参して意見を求めた。また、上田市発酵文化ネットワークで地域のメンバーとともに、玄米麹の自作試行を行って検証した。

【生態系・土壌】

浅野眞希が、博士研究(渡邊瑛勇氏)として磐梯山ジオパーク内で行った五色沼周辺の土壌特性と、土石流災害後の植林が土壌の回復に及ぼす影響について調査・研究を行った。

(3)業績

査読有 査読無
論文 学術雑誌 12 1 13
紀要等 2 0 2
解説その他 0 16 16
14 17 31
著書 2
学会発表 国際会議 3
国内会議 12
15
一般講演等 19
その他の活動 1

詳細はこちら: 「9.MSC教員業績リスト」

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