新型コロナウイルス禍により活動制限のある中、山理解目標に向けて、数多くの研究成果をあげることができた。構成員とその指導学生院生諸氏の活動概要は以下のとおりである。以下、項目ごとの活動概要を簡潔に示す。
【地球科学・気候変動】
主に地球科学や物質循環、気候変動を対象とした研究として、以下の研究成果があった。
・流域内の多様な立地における土砂管理に向けた土砂動態のプロセス解明に関する研究が推進され、中山間地の大規模崩壊、土砂・洪水氾濫発生場における水・土砂動態と、下流に冠水被害等を生じさせている広大な農耕地からの土砂流出について、実態把握がなされた。流域における適切な土砂管理対策を講じるための、基礎的研究知見の蓄積がなされた。
・茅葺き民家から大量に廃棄される古茅を利用した、バイオ炭や茅炭を開発するために、また、 Jクレジット制度登録に向けた研究が推進され、これらのための、基礎的研究知見が蓄積された。
【生物科学・生物多様性】
主に生物を対象とした多様性や生態学に関連する研究として、以下の研究成果があった。
・山梨県・長野県において、野生動物・外来生物の集団動態を評価および管理するための研究基盤整備がなされ、このための集団遺伝学や生物多様性学の基礎的研究知見が蓄積された。
・草原の生態系サービスを評価する試みがなされ、特に、歴史の古い草原は遺伝資源価値と防災機能が高いか?という課題に関して検証された。このための生物多様性学の基礎的研究知見が蓄積された。
・中山間地域における集落営林組織の展開過程に関する研究が静岡県を事例として実施され、森林に関する基礎的研究知見が蓄積された。
自然農法桃園において、害虫・天敵類の実態が調査され、そのファウナや生態に関する基礎的研究知見が蓄積された。
・山岳域にみられる伝統的発酵技術についてのアーカイブ化が試みられ、それらの発酵技術に関連する微生物の多様性や、分類学的研究知見が蓄積された。
・交雑回避に関する送粉生態学の研究が推進され、「花色の違いが動物の「偏食」を促すのはどんなときか?」という課題について基礎的研究知見が蓄積された。
【総括】
以上の山岳科学に関する研究プロジェクトの成果は、山理解目標に対して大きく貢献するとともに、その成果は、山管理目標、山活用目標にも多いに貢献するものであった。山岳科学センターの中において、目標間で縦割りに分断してしまって、血が通わなくなるということはなく、理想的な有機的連携が取れていたという点は特筆に値する。
その目標間連携の状況を、以下の図に示す。
これらの目標間で、個々の事業に携わった研究者が、つとめて分野横断的に包括連携を意識し、山岳科学を総合学問にしていこうと強く意図して、相互協力をしたからこそ、実現したものと高く評価される。山理解目標では、山岳の基礎研究的な側面に重点を置いて、理論や法則性を目指した研究推進がなされるが、同時に、これらの取り組みがが、山管理的、山活用的にも、大いに有意義な意味のあるものとして大きな成果につながっている点は、山岳科学センターがいかに柔軟に協調的に活動し、大きな機能的価値を持ちうるようになったかということを如実に示しているだろう。
査読有 | 査読無 | 計 | ||
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論文 | 学術雑誌 | 62 | 0 | 62 |
紀要等 | 0 | 6 | 6 | |
解説その他 | 0 | 5 | 5 | |
計 | 62 | 11 | 73 | |
著書 | 11 | |||
学会発表 | 国際会議 | 23 | ||
国内会議 | 93 | |||
計 | 113 | |||
一般講演等 | 11 | |||
その他の活動 | 14 |
(論文 学術雑誌 査読有の中に国際会議論文3件含む)
詳細はこちら:「9.MSC教員業績リスト」