6-4.領域:山活用

(1)領域概要

(2)今年度の取り組み概要

2023年度においては、構成員とその指導学生諸氏による研究活動がより活発になり、各分野において様々な成果を挙げられた。その概要は以下のとおりである。なお、山活用部門の成果は山管理部門のそれと重なる部分があることを記しておく。

【教育・普及】

第1に、ネパール・ポカラ市で開催された山岳域の持続的発展に関する国際会合において教育セッションを立ち上げることを行った。これは、山岳科学研究の国際化や発展に資すると期待される。第2に、玉味噌作成の絶滅危惧伝統知についての情報収集を進め、その成果を教育プログラムおよび公開講座や市民講座で社会還元した。本成果は機能強化推進費によるものであり、菌類学・植物系統分類学において重要な普及活動となった。

【良質な木材利用と桃生産への寄与】

第1に、佐賀県で開発されたスギの優良品種サガンスギの系統を用いてゲノム予測を行い、成長、材質、雄花着花性について比較的高い確率で将来世代の形質が予測できることを明らかにした。将来的なスギ材の利用推進につながる成果と期待される。第2に、国内においては甲府盆地の環境保全型の桃園と近隣の慣行型の桃園を対象に、害虫ハダニ類と天敵カブリダニ類の個体数を2022年から2023年にかけて調査を行い、その結果から環境保全型の桃園では何かしらのメカニズムによりハダニ密度が安定し、その安定性が高品質の桃生産に寄与していることが示唆された。本成果は機能強化推進費によるものであり、さらにメカニズム解明を行い、実用化につながる成果にしていきたい。

【観光・ツーリズム】

第1に、1998年長野オリンピック開催地域のレガシーについて、スキー競技が開催されたスキーリゾートにおける選手育成の観点から分析を行った。その結果、一般の人びとが楽しむスキーは、日本ではアルペンに著しく特化しており、逆にクロスカントリースキーの競技性が高いことと関係していることを明らかにした。第2に、中央日本のスキー場における夏季ツーリズムの展開について、北海道ニセコ地域における新型宿泊施設の立地動向について分析を行った。これらは、スキー選手育成やスキー場の通年利用に関する重要な知見を与えるものとなった。

【林政・林業】

第1に、日本の森林経営管理制度を対象にして、市町村による広域連携の効果を埼玉県秩父地域と長野県木曽郡を事例に明らかにすると共に、都道府県による市町村への支援の仕方を類型化して把握した。2024年度から森林環境税が本格導入されるに当たり、これまでに見えてきた成果や課題を示す内容であり、本制度の充実に寄与すると考えられる。第2に、我が国の代表的な林業労働政策である「緑の雇用」事業の一環として、全国の「緑の雇用」研修生に対するアンケート調査等を行い、実態把握を行った。約20年に及ぶ「緑の雇用」事業のさらなる充実に向けて示唆を与える内容となった。第3に、農林業への野生動物被害の深刻化に対して、シカの肉以外の多用途利用(皮、骨、角、内臓等)を取り扱う全国の事業者に対するアンケート調査、及びシカの捕獲、解体処理、販売まで一貫して行う事業者に対する聞き取り調査を実施し、その実態と課題を明らかにした。本成果は機能強化推進費によるものであり、同様の調査を継続するとともに、論文等の公表により成果の普及に努めていきたい。

【木材産業】

1960年代以降における日本の紙パルプ産業を取り上げ、そのチップ原料調達システムの構築と変容を明らかにした。国際貿易環境が大きく変化する中で、日本の紙パルプ産業の今後に示唆を与える成果と期待される。

(3)業績

査読有 査読無
論文 学術雑誌 8 4 12
紀要等 0 2 2
解説その他 0 2 2
8 8 16
著書 5
学会発表 国際会議 1
国内会議 18
19
一般講演等 13
その他の活動 4

詳細はこちら: 「9.MSC教員業績リスト」

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