井川演習林では南アルプス地域の特性を生かした砂防、水文、生態学の調査研究を実施していくとともに、それらの教育、研究活動を受け入れている。しかし、近年は新型コロナ感染症の影響を受け、実習中止や制限付きでの利用者受け入れとなっている。その中で卒論、修論等における研究補助等の利用者対応業務を実施している。
また、前年度に引き続き、静岡県からの受託調査として南アルプス高山地域での調査業務を井川演習林内で実施した。2021年度には筑波大学山岳科学センターと静岡県の間で連携協定が締結されたこともあり、今後も静岡県と協力関係のもと実施される業務も実施されていくと考えられる。
通常業務として総合気象観測や水文観測施設の維持管理等の観測ステーション整備のほか、演習林の森林管理については、計画通りに実施されており大きな問題はなかった。
本年度も新型コロナによる影響は続いているが、平常に戻ることを念頭に活動した。技術職員の対応が必要な実習および調査・研究、公開講座、学会のエクスカーション等についても、制限の範囲内で可能な限り受け入れを行い、これに対応した。
恵みの森については、コロナ禍に入ってから、整備が消極的となっていた。本年度は遊歩道を被覆する灌木を除去し、遊歩道の拡幅とショートコースを新設した。また、ミズナラを植栽した不成績植栽地の一部区画について、地拵えを行った。
八ヶ岳演習林(希少な湿原の残る)については、中部横断道の関係もあり、長期の動植物のモニタリングを開始している。また、木道とステージの老朽化については、相談しながら、更新、整備を継続的に行っている。
川上演習林については、スマート林業を目指して、2期目の森林経営計画の見直しを進めているところである。本年度内には決まらず、来年度以降も引き続き検討する。併せて、地権者の演習林の見学等も予定したが、日程が合わず実現できなかった。林道整備は、隔年の委託整備事業に縮小し、本年度は直営で整備した。
里山関連のステーションとして教育研究に一層活用されることを目標に整備を進めている。今年度はアルコール消毒や換気をするなど新型コロナ感染症への感染対策を講じることでほぼコロナ前の水準で授業や実習を実施することができた。2020年度から植物見本園でカシノナガキクイムシの発生が確認されたため、昆虫トラップによる防除と調査を行った。ナラ枯れによって枯死した樹木は伐採し、粉砕処理や燻蒸処理を行った。施設部の要請で本部棟前シダレザクラの後継樹の養生を行っていたが、2月末に掘り取り、施設部の管理する圃場へ植え替えた。また、一昨年度実験林内にアライグマの生息が確認されているため、自動撮影カメラによる哺乳類調査と罠によるアライグマ防除を継続して実施した。次年度は茨城県からの業務委託で筑波山由来のブナの育苗を行う予定である。
当実験所を中心に精力的に活動しているボランティアグループ「ナチュラリストの会」のメンバーの増員を目標にナチュラリスト基礎講座を開講した。技術職員も講師となり、フィールド活動の際の諸注意や樹木園に関する講義を行った。15名の受講生のうち4名がノルマをクリアし、「ナチュラリストの会」に加わることになった。残りの受講生はノルマの達成を目指し次年度も活動を継続していく。
また、「ナチュラリストの会」がコロナ禍により中止していた自然観察会を3年ぶりに実施し、技術職員もそのサポートを行った。
宿泊棟では引き続きコロナ禍での対応となった。その中でも参加希望者を1人でも多く受け入れるために、室内の机および椅子を小ぶりなものに更新するなど行った。
長年の懸案事項でもあったススキ草原の集草作業を自分達だけで完了させることができた。外周フェンス沿いの雑木処理も進めることができた。
令和4年度社会貢献プロジェクトにより、実習・研究用観察道の整備を業者と共に実施した。その結果、道幅が狭くなっていたり、岩が露出したりしていた場所について、利用者が安全に通行できるように整備することができた。同時に修繕技術を習得することができた。また、樹木園にある現在地を示すための杭のうち腐朽していたものを更新したり、ナチュラリストが2年間かけてまとめて樹木データを小冊子にしたりなどした。
ステーション | 主な業務 |
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菅平高原実験所 | (1)構内全体の環境整備関連 樹木園及び建物周辺部の環境整備/外周フェンス周辺の草刈り・笹刈りおよび雑木整理/樹木園内及びアカマツ林内観察道の保守管理/ススキ草原地上部除去作業/苗圃全体の管理/希少植物の保存等/樹木名ラベルの取り付け及び交換/林冠タワーの軽微な点検/機械器具の点検整備/給水・電気・ボイラー等諸設備の日常点検/建物内の軽微な修繕/構内の除雪 (2)教育・研究関連 樹木園内及び構内樹木の成長調査/気象観測データ整理等及び観測機器の保守管理/学生実習等における教育活動/気象観測データ整理等及び観測機器の保守管理/アカマツ林及び針広混交林におけるリターフォール観測/所蔵動植物標本点検・補修・保管管理等/樹木園等の来訪者に対する説明及び案内/図書受入及び管理/積雪観測/研究者及び学生の研究実験補助 (3)その他 公開講座およびイベント等の企画立案/構内清掃/サーバ管理及びネットワーク管理/WEB/SNS更新及び管理/広報/実験所関連新旧資料の整理等/事務補助/宿泊棟補助/菅平生き物通信発行/ナチュラリスト活動支援 |
八ヶ岳演習林 | 調査・研究のフィールドの提供と技術協力/本州中部・冷温帯の森林育成/気象観測/二次林、中間湿原、希少動植物の保全と研究/自然観察路の管理 /実習教育 |
井川演習林 | 実習教育・研究のフィールド提供/温帯中部の森林育成/源流域の林地保全と流域管理/実習教育/受託調査 |
筑波実験林 | 教育・研究のフィールドの提供/里山林の動植物保全・育成管理/植物見本園管理 /林木の種苗育成/兵太郎池管理/気象観測:観測装置保守点検、データ回収等/機械整備/実習教育 |