７－４．筑波実験林

（４）令和３年度の活動概要

2021年度も里山のミニチュア的学内緑地というような立地条件・環境の特徴を活用して、里山環境の管理・保全、学内研究フイールド・実験圃場として活用を図った。

研究

「里山の外来種管理」として、外来種ウシガエルの管理に資するため、本実験林の調整池に棲む本種の個体数・齢査定に関する調査を本学保全生態学研究室の教員・学生と連携して取り組んだ。「植物フェノロジー（生物季節学）」では、海洋研究開発機構の研究員・学内教員により里山林の代表的樹種であるスダジイ等のフェノロジーがタイムラプスカメラを用いて観察された。スギ・ダケカンバ産地別試験地では、樹木の成長・形質の産地ごとの応答の違いについて調査がなされた。これまでMSC教員及び東大・東北大等の他大学教員、森林研究・整備機構の研究員が参画していたが、新たに神戸大も加わった。

教育

マスク着用、三密回避等のコロナウイルス感染対策をしながら、本年度も生物資源学類を主とした1年生向けの専門基礎科目実習「生物資源フイールド学実習」や2年生向けの専門科目実習Ⅰ「生物資源生産科学実習Ⅰ・Ⅱ」等の大人数の実習から、3年生向けの専門科目実習Ⅱ「農林生物学実験」が実施された。新型コロナ禍の影響により通常は他ステーションで実施する生物資源学類「森林水文・砂防学実習」、「森林総合実習」は本年度も実験林で行われた。その他、生物学類「植物系統分類学実験I」も開催された。大学院の授業では、山岳科学学位プログラム「里山管理実習」、「モデル生態学実習」が実施された。

社会貢献

大学附属病院と共同で実施しているリワークデイケアは、コロナ禍により昨年度は2回だけの実施だったが今年度は9回実施し、コロナ禍前の状況に戻りつつある。また、動画やPDF 資料のオンラインを活用した映像配信も行った。

施設・フィールド管理

施設管理として実習室等の老朽化したブラインドの更新を行った。フィールド管理では、2020年にナラ枯れ菌を媒介するカシノナガキクイムシが初めて確認された。そこで、本種の大増殖を抑制するためトラップを用いた捕殺等防除を試みたが、枯死木が発生した。生態系・生物多様性保全のため、本フィールドにも生息する特定外来種アライグマの捕獲も試みたが、捕獲数0だった。

今年度のトピック

筑波大学本部棟前シダレザクラ復活のための苗木養成
施設部からの依頼で、大学のシンボル的シダレザクラの後継樹を接木により養生した。今年度はうまく活着して根回しの状態まで進めることができた。
産地別試験地
ダケカンバの産地別試験地で、産地ごとの樹木の成長・形質・遺伝的特徴調査・環境応答について調査中である。今年度は、試験地管理のため防草シートを敷いた。
ナラ枯れの防除
　2020年に初めてナラ枯れが確認されたので、本年度はナラ菌を媒介するカシノナガキクイムシ大発生に備えて捕殺トラップ（写真）等による防除を試みた。

（５）施設利用実績

（５－１）施設利用者数

５－３. ステーション利用実績

（５－２）施設を利用した実習

計28実習（公開実習:4、受託実習:15、その他:9）
詳細はこちら

実習例

モデル生物多様性実習/モデル生物生態学実習
里山管理実習
森林水文・砂防学実習
植物系統分類学実験Ⅰ
環境工学フィールド実習
生物資源生産科学実習Ⅰ・Ⅱ
生物資源フィールド学実習
農林生物学基礎実験
森林生物学実習
森林総合実習
陸域生態学実習
植物寄生菌学実験
大学院共通科目「魅力ある理科教員になるための生物・地学実験」
農林生物学実験
森林育成学実験
地球資源科学実験

（５－３）施設を利用した研究

業績

		査読有	査読無	計
論文（MSC教職員の内数）	学術雑誌	3(3)	0(0)	3(3)
	紀要等	0(0)	0(0)	0(0)
	解説その他	2(0)	1(0)	3(0)
	計	5(3)	1(0)	6(3)
著書（MSC教職員の内数）				0(0)
学会発表（MSC教職員の内数）	国際会議			1(1)
	国内会議			7(7)
	計			8(8)
一般講演等*				1
その他の活動*				0

*MSC教職員のみ

詳細はこちら：「９．ＭＳＣ教員業績リスト」；「１０．ステーション利用による研究業績リスト（ＭＳＣ教員外）」

研究テーマ

ＭＳＣ教職員・学生

Ragini Sarmah（院生）ダケカンバ実生を用いた産地試験個体の光合成特性に関する研究
相原隆貴（院生）大規模産地試験林を用いた樹木の局所環境適応遺伝子の解明
篠原碧（院生）衛星リモートセンシングによる植物季節観測と樹種判別の高精度化のための地上検証
松本尚樹（院生）Bamboo mitesの生物的防除に関する研究
田邉萌（院生）筑波大学におけるコウモリ類の活動の時間変化と季節変化に関する研究
Paul A. E. FAURE(Bordeaux University・筑波大学特別研究学生)筑波大学におけるコウモリ類の活動の時間変化と季節変化に関する研究

学内利用

ウメPrunus mumeの落下果実およびウメ落下果実に生息するケシキスイ科幼虫消化管内の原生生物、特にヴァリオセア網アメーバの調査（生物学学位プログラム・院生）
ダンゴムシにおける腸内細菌の細胞間相互作用の解明（生物学類・学生）

学外利用

衛星リモートセンシングによる植物季節観測と樹種判別の高精度化のための地上検証（海洋研究開発機構・主任研究員)
スギ稚樹の葉形質の被陰応答に関する研究（東京大学・教員）
ゴマダラカミキリの寄生確認と採集（農研機構・上席研究員）
炭素分配戦略の視点から明らかにする天然スギ機能形質の地理変異（神戸大学・教員）
スギのBVOC放出の地理変異（東京大学・学生）

（５－４）社会貢献活動

５－４．社会貢献活動実績