7-1. 菅平高原実験所

(1)場所と施設の概要

(2)メンバー

(3)ステーションの方向性と抱負

(4)今年度の活動概要

2022年度も、新型コロナウイルス感染症対策に苦慮したものの、3年目に入り、ある程度の対応体制が確立したことから、人数制限はしたものの、おおむねほとんどの実習や研究利用を受け入れ、いずれも無事に完了して、乗り切ることができた。実験所として取り組んだ研究、教育の具体的成果は、それぞれ該当箇所のデータを参照されたい。その他、本年度を通して、実験所の活動、運営の際に苦労した点や成果を、以下に報告する。

【実験所運営に関する今年度のトピック(教職員の声からの総括)】

★新型コロナ対策、コロナ禍下での実習受け入れ継続
・教職員、学生にもかなりの濃厚接触者や感染者が出たものの、実習等の行事は、ほぼ予定通りに安全に完了できた。感染者が出た際の関係者、接触者への連絡、所内への周知、所属長等への報告、自宅待機期間の指示や大学への報告などの流れについて、しっかりした指針を作成し、落ち着いて円滑に対処できる体制が確立された。昨年に続けて、宿泊棟の部屋への仕切りカーテンと喚起ユニット設置による個室の増設化工事を進めて、最大収容人数を、20名から24名に増加することができた。次年度のコロナ感染症の5類化に合わせて、受入れ方針の改訂が必要ということで議論を開始した。

★学生実習
・宿泊棟の個室の増加に伴い、前年度よりも利用者が増加した。実習のアンケート結果をみても、利用者からの評価はおおむね好評であった。アンケート項目の見直しなども進めた。実習準備室や宿泊棟の環境整備の予算措置に感謝している。実習準備室や実習実験室、実習備品の整理整頓が進み、維持管理が抜群に向上した。


実習風景 屋外

実習風景 屋内

★朝ミーティング
・実験所教職員の毎朝のミーティングを2年半継続して、日課として定着し、相互理解に基づく教職員の共同協力体制が確立した。今年度で樫山係長が退職することとなり、来年度、開所以来、はじめて事務係長が現地に不在の事態となることが強く懸念された。菅平勤務希望の事務職員が見つからず、やむを得ず、来年度より、つくばキャンパスでMSCオフィスに菅平担当事務を配置してもらうように強く要望を出した。意思の疎通をはかるためにつくばキャンパスからの朝ミーティングへのオンライン参加要請も検討している。

★大明神寮保存活用計画策定
・保存活用計画案の策定 (2か年の国庫補助事業)が完了した。
https://msc.tsukuba.ac.jp/news20220812/
計画内容や今後の整備方針、進め方等について、財務施設担当理事、財務部長、財務企画課長、施設部長、施設企画課長などの関係者に説明し、理解が得られた。学長からは、かねてより文化財の維持保全について厳しい指導があったが、今回は、もっとスケールの大きい大胆な計画も検討してみてはどうかとの心強いコメントを頂き、関心をもって前向きに受け止めて頂いているという感触を得た。次の課題は、クラウドファンディングも視野に入れた目標額900万円の事業費要求である。クラウドファンディングのコーディネートをする業者とのミーティングを実施し情報収集を開始した。今後、フィールドICTミュージアム拠点として活発な活用を検討していきたい。天候不順であったため、柿渋塗は秋に実施し、無事に完了した。新たな取り組みとして、菅平ナチュラリストの会と共同で、柿渋の自作試行を行っている。昨年度仕込んだ柿渋を来年度、実際に適用試行してみるべく、熟成を進めている。

https://msc.tsukuba.ac.jp/news20221121_2/
柿渋の自作試行

★実験廃水の排水設備の改修整備
・施設部および環境安全管理室と相談しながら、実験廃水処理を改善する方向に大きく前進した。しかし、まだ、懸案課題が残っており、来年度も関係部署と相談しながら継続対応をしていく予定である。令和3年度、菅平高原実験所の実験廃水処理設備は、配管の破損やPH計の故障などにより機能不全となっていた。施設部と安全管理室が主体となって、新たに設備を改修し、竣工後は、特定設備の届出を上田市に行う予定で改修工事を実施してきた。しかし、令和4年度に入って安全管理室の竣工後の現場調査により、同設備が基準、法令に適合しないもであるとの見解があったた。そこで、その後追加工事を行い1月に完了をした。このため、余計な労力と予算と時間を費やす結果となってしまった点は残念である。施設部と安全管理室との連絡調整や意思疎通ができていなかったこと、また、菅平も事務局と共通認識、共通理解ができていなかったことが反省される。

★技術職員室の活躍
●屋内維持管理
・ガレージ内整理:長年にわたりガレージ内にあった物品のうち不要なものを処分し、整理整頓を完了。冬用タイヤの管理などについて方針を整理して運用していけるようになった。
・ボイラーの故障対応:老朽化に伴い、度々故障を起こすポンプについて、検討をした結果、漏水防止用シールの問題と判明して対処をした。
・継続懸案課題:故障中の生ゴミ処理機の修理について、検討を続けていく。
・マイクロバスの更新を行った。

●フィールド維持管理
・草原の刈り取り・集草作業:退職した先輩職員の助力なしに、現スタッフのみでススキ草原の刈り取り、集草作業を完遂することができるようになった。(昨年度末に教習所で免許取得もした。)。草刈り・集草機器が老朽化してくるので、その更新については継続懸案課題として取り組んでいく。
・フェンス沿いの雑木処理:正門側で完了した。サニアパーク側は半分まで完了した。作業量が多い重労働であることが再認識された。今年も引き続き作業を推進する予定である。外周全周整備、演習林からの借用もしくは業者レンタルなどによるウッドチッパー導入に向けた検討も開始している。
・滝までの観察道整備:地元業者に協力いただき、滝までの観察道の修繕、拡幅工事、台風により大きな被害を受けた滝付近の歩道の石積み整備による安全対策工事を完了できた。

台風被害を受けた大明神滝周辺の歩道の復活(石積み部分)
・実験所教職員学生全員で、消防訓練を実施した。

放水訓練の様子

●社会貢献・標本室整備
・2022年度、笹川科学研究助成実践研究部門「一般市民との協働による地域資源を活用した生涯学習の場「みんなの標本庫」」の採択を受け、同事業の実施により標本の台紙への貼付作業が大きく推進するなどしてハーバリウムが充実し、大きな成果が得られ、報告をまとめて完了した。2024年、同研究助成の後継事業の採択を受け、引き続き、活動を継続できることとなった。
・長野県植物誌編纂のためのバウチャー標本の寄贈があり、その受け入れ、標本整理、配架作業などを進めた。
https://msc.tsukuba.ac.jp/news20220412/
https://msc.tsukuba.ac.jp/news20220627/
・収蔵標本のS-Net, GBIFへの登録作業を継続し、公開化をはかった。
・変形菌標本棚の整備方針について検討を進めた。

★菅平ナチュラリストの会(実験所公式市民ボランティアスタッフ)の活躍
・新規にナチュラリスト基礎講座を開始した。人員補充、世代交代を目指して新規受講生を募集することとなった。
・現ナチュラリストメンバー+新規受講生により、笹川研究助成課題の一環として「標本の日」を毎月2回ずつ実施し、標本整理が大きく進展した。
・現ナチュラリストメンバーによる2年越しの樹木の観察調査の成果が「My木ハンドブック」として印刷製本配布された。

★学生・研究員の受賞・資金獲得等
・国内外の学会等で学生の研究発表が表彰(6件)+茗渓会賞(山岳P神藤友宏) (津田研)
・令和4年度中部森林技術交流発表会森林・林業振興賞、令和4年度森林・林業技術等交流発表会特別賞 (津田研)
(https://msc.tsukuba.ac.jp/news20230201/)
・R4年度:JSPS海外特別研究員1名、PD1名、DC1名(R5年度はDC追加1、PD追加1)(山岳科学学位プログラムでの森林・山岳人材育成教育の・取組)(津田研)
・院生3名の受賞(日本菌学会最優秀発表賞・李知彦、同・須川元、日本菌学会優秀発表賞・吉橋佑馬)(出川研)
・研究員1名、博士1名、修士5名の就職内定(3研究室菅平全体)

★大型資金獲得等
・環境総合推進費採択(田中)、同一次審査のみ通過(津田)
・MSC概算要求構想のとりまとめ・学長からの見直し指示(田中)
・研究拠点形成事業-B.アジア・アフリカ学術基盤形成型-の執行・対応 (津田)
・JSPS二国間交流事業:イタリアCNRとの共同研究採択(津田)
・市村清財団植物研究助成(出川)

★将来計画WG
・現行の実験所将来計画は、教員のみの議論に基づき作成されていたことから、2022年4月以後、原則として毎月1回、連絡会議後に参加可能な教職員全員が参加して1時間程度、将来計画について議論をした。繁忙期などを除き、8回実施した。各回、順番に全員の意見を出し、改定案については継続討議中。第9版案を検討している段階にある。
総合研究課題として、以下の3本柱を設ける方向で検討している。
(1)フィールドICTミュージアム総合研究課題
(2)山岳の進化生物学総合研究課題
(3)山岳の地域社会における生態系管理

★樫山係長の退職
・長年、菅平高原実験所の事務を担当下さった樫山茂樹係長が2022年3月末日をもって退職されました。実験所の活動を長期にわたり真摯に支えて下さった樫山係長に心より感謝申し上げます。


教職員による送迎

学生からの感謝

(5)施設利用実績

(5-1)施設利用者数

概要はこちら:「5-3. ステーション利用実績」

(5-2)施設を利用した実習

計実習(公開実習:13、受託実習12、その他44)
詳細はこちら

実習例

(5-3)施設を利用した研究

業績

査読有 査読無
論文(MSC教職員の内数) 学術雑誌 18(17) 2(2) 20(19)
紀要等 0(0) 4(2) 4(2)
解説その他 4(0) 0(0) 4(0)
22(17) 6(4) 28(21)
著書(MSC教職員の内数) 1(1)
学会発表(MSC教職員の内数) 国際会議 8(8)
国内会議 67(64)
75(72)
一般講演等* 5
その他の活動* 6

*MSC教職員のみ

詳細はこちら:「9.MSC教員業績リスト」「10.ステーション利用による研究業績リスト(MSC教員外)」

研究テーマ

2022年度の菅平高原実験所を利用した研究の研究テーマについては、「2022年度菅平高原実験所 研究利用 研究課題」を参照してください。

(5-4)社会貢献活動

概要と詳細はこちら:「5-4.社会貢献活動実績」

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