菅平高原実験所
本州中央部の標高1300 mにある施設・設備を学内外に開き、
生物科学・地球科学・農学などの分野を横断した研究・教育・地域貢献を進めています。
樹木園を平日9~16時に一般公開しています。
研究・教育利用や一般公開の自然観察等について、随時お問い合わせ下さい。
実験所の概要
当実験所は、本州中央部の標高約1,300mの高冷地にあるというその立地条件を活かし、また広い実験地、敷地と施設・設備を十分に活用することにより、生物科学、地球科学、農学などの自然環境に関連する教育・研究の場として機能しています。また、他の大学・研究機関にも可能な限り開放することにより、学際的な分野を含めた自然環境科学の教育・研究の発展に貢献することも目指しています。
日本国内では山地を対象にした教育研究施設はたいへん少なく、当実験所のほかには東北大学八甲田山植物実験所、信州大学志賀自然教育研究施設、九州大学彦山生物学実験所などがあるだけです。さらに当実験所は、その歴史や立地環境、広大な敷地面積や充実した施設と設備など、ユニークな特徴を持っています。
植生遷移の見本
開設以前は一面に放牧草原が広がっていましたが、計画管理を経て、様々な遷移段階の植生が隣接して観察できる良い見本になっています。手前には毎年刈取りによって維持している草原、その奥に、1970年頃の刈取中止頃から天然更新によって成立したアカマツ林、同様に1945年頃からでき始めたアカマツ・落葉広葉樹混交林があり、さらにその奥に、薪炭林が伐倒された後に切株から萌芽更新した林齢80年以上の落葉広葉樹林があります。幅広い遷移段階によって、高い生物多様性が支えられています。奥に進むにつれ、どんどん遷移経過年数が増えていき、さながらタイムスリップのようです。
山岳生物多様性学
1934年の開設以来、生態系の骨格を作る植物、既知の多様性が最大の昆虫・節足動物、未知の多様性が最大の菌類・微生物を三本柱として、ナチュラルヒストリー・分類・発生・生態・遺伝・相互作用などの山岳生物多様性学を推進しています。敷地内で、草本・樹木約400種、地球上の昆虫全32目のうち29目、菌類全136目のうち86目が観察・採集可能で、そのノウハウが長年にわたって蓄積されています。
氷期遺存種
氷期に広く分布していた生物種が、暖かくなることで生育期を狭め、限られた生息地に遺存的に分布しているものを氷期遺存種と呼びます。日本の急峻な高山帯にはそのような生物が多く見られます。一方、菅平は稚内と同程度に冷涼で、なだらかな地形が広がっていることから、氷期遺存種の中でも平らな場所を好むカラフトイバラ、クロビイタヤ、シバタカエデ、クロミサンザシ、ツキヌキソウ、オニヒョウタンボク、ハナヒョウタンボク、キンギンボクなどの植物、ガロアムシ、トワダカワゲラなどの動物が生息しています。
貴重な半自然草原
所内には、刈取りという人為撹乱によって半自然草原が6ha維持されています。そこには厚さ60 cmを越す真っ黒な黒ボク土があり、年代測定によって、約5500年前の縄文時代から続く草原環境で堆積されたものと推定されています。草原は、自然撹乱や人為的な火入れ・放牧によって生成・維持され、数十万年前からの氷期以降を通じて日本の陸地の1割から数割を占めてきたと考えられます。しかし、人間による自然撹乱の抑制と人為草原の利用放棄によって近年急速に草原が衰退し、国土のわずか1%にまで減り、古くから生息してきた数多くの草原生動植物が絶滅の危機にさらされています。多様な在来植物が優占する草原を学術機関が所有し、操作実験を含む研究・教育に活用されていることは、大変稀です。
冬の低温環境
冬は寒さが厳しく、日中も氷点下の真冬日が続き、2月の平均気温は摂氏マイナス5.5度にもなります。 12月から4月上旬にかけて1 m程度の積雪が生じますが、日本海側との天気界に位置するために晴天日も多く、 冬鳥や、雪上に残されたカモシカやニホンリスなどの野生動物の足跡など、冬期の生態系を観察することができます。 高地の低温環境を生かした雪氷気象の実習・研究も行っています。
筑波大学山岳科学センター
菅平高原実験所
〒386-2204 長野県上田市菅平高原 1278-294
TEL:0268-74-2002 FAX:0268-74-2016
E-MAIL : suga-jimu@msc.tsukuba.ac.jp
https://sugadaira.tsukuba.ac.jp(旧サイト。最新情報は現在のページからご確認ください)
アクセス
上田駅(北陸新幹線・しなの鉄道・別所線)から、
上田バスで1時間、「菅平高原ダボス」降車。徒歩10分。