菅平の植物
ここでは、菅平高原の中で最も標高の低い菅平湿原から順に、菅平高原の植物についての概略を紹介します。
菅平湿原は下流域にハンノキやヤチダモの湿性林、上流域にはオオカサスゲ、オニナルコスゲの密生する菅(スゲ)の湿原、すなわち「菅平」になっています。この地域は自然状態が良く保存されており、湿性林にはクロミサンザシ、シバタカエデ(クロビイタヤ)、オニヒョウタンボク、ハナヒョウタンボクなどの植物分布上貴重な北方系の珍しい樹木が生育しています。
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山の斜面をきざむ谷沿いにはミズナラ、シナノキ、ヤマハンノキ、トチノキなどの夏緑広葉樹が繁茂していて、林縁にはヤマハマナス(カラフトイバラ)、ツキヌキソウなどの植物分布上貴重な国内では大変珍しい北方系の植物が生育しています。このように北方系の貴重な植物が数多く見られるのは、地球の気候が氷河期と間氷期とを繰り返したときに、菅平のような標高の高い場所だけに、寒さに強い北方系の植物が取り残されたためだろうと考えられています。
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(カラフトイバラ)
根子岳、四阿山に登っていくと、途中1,500mくらいまでの標高ではシラカンバが多いのですが、さらに登るとダケカンバ林に変化します。やがてダケカンバはまばらになり、丈の低いコケモモ、ガンコウラン、クロマメノキなどがカーペット状に生育している場所に出ます。ここは亜高山の針葉樹林が成立する標高ですが、根子岳・四阿山とも樹林はまだ発達していません。しかし、頂上付近まで登るとシラベ(シラビソ)やコメツガなどの針葉樹林が見られるようになります。そこでは草地も見られ、短い夏の間にハクサンチドリ、ハクサンオミナエシ、ヒメシャジンなどの高山植物が花を咲かせ、ミヤマモンキチョウやベニヒカゲなどの珍しいチョウが乱舞します。