構内の自然
当実験所では、生物多様性に関する教育・研究の場として施設・設備を十分に機能させるために、敷地を樹木園・草原・アカマツ林・落葉広葉樹林に分けて、それぞれの目的に応じた保護管理を行っています。
実験地は自然が良好に保たれており、様々な研究・調査が継続されています。貴重な自然と継続調査地を将来にわたって保全する必要があります。 また、周囲に危険箇所があるために状況に応じた注意を要します。そのため樹木園を除く実験地は、当実験所が開催する公開日などを除いて、一般に対 しては原則非公開となっています。なにとぞご了承ください。特に研究・教育目的による実験地の利用は随時受け付けておりますので、施設利用 をご覧ください。
樹木園
草原であった場所を1955年に造成を開始し、様々な樹種を植栽してきました。
そこに自然に進入・定着した種が加わりは、今日では200種あまりの樹木からなる立派な樹林となり、動物やカビ・キノコの良好な観察場所ともなっています。
菅平高原の代表的な潜在自然植生のひとつだと考えられているブナ林の復元を目指して、シラカンバ林の林床にブナの苗木を植えてブナ人工林の育成も行い、ブナの成長にともなう生物相・微気候・土壌などの変化を記録し、野外実習や研究の場として利用できるように管理しています。
一部のブナ個体が、2005年頃から結実を開始しました。
より詳しくは、樹木園のページをご覧ください。
草原
当センターが開設された1934年当時、敷地は放牧等で維持されてきた草原でした。
日本の気候化では、草原を放置すると次第に樹木が進入してアカマツやシラカンバなどが優先する先駆性の森林に遷移していきます。
当センターでは敷地のうち約6haを、毎年秋に刈り取りを行うことで、半自然草原を維持しています。
ススキ・ヤマハギ・ワレモコウ・マツムシソウなどが優占する本州中部の典型的な山地草原となっています。
ここでは、草原の自然の移り変わりを追跡調査すると同時に、種多様性と生産性の関係を調べる実験、ワラビ採集の植物群集への影響を調べる実験、温暖化が植物群集に与える影響を調べる実験、草原から森林への遷移が撹乱の種類によってどう変わるかを調べる実験などを行っています。
草原生態系と大気の間の熱・二酸化炭素の交換の様子も長期観測されています。
アカマツ林
毎年の刈り取りによって草原として維持されてきた場所のうち約8.5haが、途中で刈り取りを中止したことで自然に樹木が進入し、今日ではアカマツが優先する森林になっています。このうち4haはアカマツの優占度が高い最大樹齢約45歳(2012年現在)の森林で、樹高約15m・直径30cm以上のアカマツが見られます。
残りの4.5haはアカマツ・ミズナラ・シラカンバが混交する約65歳の森林で、最大直径50cmを超します。
これらの森林ができるまでの間、植栽・下草刈り・伐採・農薬散布などの人為管理は一切行っておらず(遊歩道の維持だけを行っています)、全く自然に形成された森林です。
日本のほとんどの草原や森林伐採跡地は、植林などを行わずともただ放っておくことで自然の森林になりますが、その良い見本になっています。
これらの森林では、永久試験地(約2ha)で樹木の成長や森林群集の変化を長期観測する毎木調査・リタートラップ調査が行われている他、ほ乳類・昆虫・菌類の生物相調査や、様々な実験を行っています。
落葉広葉樹林
根子岳・四阿山の間より発し本センターの敷地内を流れる大明神沢沿いには、約14haのミズナラ・シラカンバ・カエデ類・サクラ類・シナノキ・トチノキ・アズキナシなどからなる落葉樹林が見られます。ここは、元々落葉樹林として維持されてきた場所が、当センターが開設された1934年以前に大部分が伐採され、その切り株からの芽生えによって自然に森林が再生(萌芽更新)した場所だと考えられます。ほとんどの場所ではアカマツ林同様、伐採以後は一切人為的管理が入っていません。一部の場所では、カラマツ・ドイツトウヒ・ブナなどが植栽され、成長しています。敷地内で最も成熟度が高く、また菅平高原の中でも最も保存状態の良い河畔林の一つであり、多数の動植物が生息しています。生物科学・環境科学などの実習地・研究地として極めて利用価値が高く、その保存につとめています。ここでも、永久試験地(約1ha)での毎木調査・リタートラップ調査、生物相調査、各種実験が行なわれています。