広場
青々とした芝の広がる空間に、ヤマナラシ、ウリハダカエデ、スズカケノキ、コブシなどが植えられています。5月下旬にはライラックが咲き出し、あたりに甘い香りが漂います。樹木園を訪れる人々のいこいの場となっています。
ブナの林
ここは樹齢約30年のブナが広がる林です。林内には厚く落ち葉がつもり、ふかふかとした歩き心地です。約50年前のこの場所は草原でしたが、今ではその面影はほとんど感じられません。
まだ樹高6mほどのブナ達にまじって、高木として立派に成長したシラカンバやヤマハンノキが見られます。シラカンバ・ヤマハンノキは毎年たくさんの種を飛ばしますが、陽樹(日陰に弱い木)であるためにブナでおおわれた林内ではその子供は育ちません。一方陰樹(日陰に強い木)であるブナは、将来果実をたくさんつけるべく、他の木の下ですくすくと育っています。
亜高山帯の植物
樹木園入り口付近にある小さな山では、シラタマノキ、ハイマツ、タカネナナカマド、ミネヤナギ、ウラジロヨウラクなど、より標高の高い地域に生育する植物を見ることができます。樹木園の標高は本来の生育地と比べると低いのですが、毎年元気に花を咲かせる木もあります。また、高山の植物以外にも、ヤマボウシ、オオバスノキ、ノリウツギなどが見られます。
針葉樹の林
樹木園には30種類以上の針葉樹があります。シラベ(シラビソ)やコメツガといった菅平や周辺の山々の山頂部にある樹木を始めとして、北海道などに分布するエゾマツ・トドマツ・アカエゾマツ、さらにドイツトウヒやストローブマツなど海外に分布する樹木も見ることができます。足元に注意しながら歩いていると、いろいろな形の球果(きゅうか:いわゆるまつぼっくり)が見つかります。
シラベとカラマツの林
菅平にはかつてブナの林が広がっていたと考えられていますが、現在はカラマツの人工林が目立ちます。カラマツは富士山や浅間山などの天然林が有名で、本来は火山の噴火による荒廃地や、冷涼な地域における山火事跡地などに侵入して森林を形成する樹木です。カラマツは陽樹(日陰に弱い木)であるため、現在カラマツ林である場所も高冷地ではシラベやコメツガなどの林へ、その他の場所ではブナ林などその土地本来の景観へと長い年月をかけて移り変わっていくと思われます。樹木園のシラベとカラマツの林では、そのような移行過程(遷移)の途中の段階を感じることができます。
カラマツの林
菅平にはかつてブナ林が広がっていたと考えられていますが、現在はカラマツの人工林が目立ちます。カラマツの葉は4月の終わりごろ冬芽から顔を出しはじめ、5月中旬~下旬には周辺の山を美しい新緑色に染めます。10月下旬から11月上旬かけて見られる黄~オレンジ色の黄葉も、澄んだ秋空に映えて目を楽しませます。
カラマツは陽樹(耐陰性が弱い木)であるため、菅平ではいずれブナ林に移行していくと思われています。しかし、カラマツの落葉はとても分解されにくく、カラマツ林に他の植物が侵入するまでにはとても長い年月がかかることになるかもしれません。
いろいろな動物
自然豊かな樹木園は野生動物たちの生活の場でもあります。もっともよく見られるのはリスで、彼らはよく木の上でクルミやまつぼっくりをかじっています。また、カモシカもときどき餌を探しにきます。その他、テン、タヌキ、キツネ、ウサギ、ネズミ、ヤマネなどにも運がよければ出会うことができます。
いろいろな木の実や林に住む虫などを目当てに野鳥も訪れます。菅平付近では過去に141種の鳥類が観察されており、この地域の広さから考えれば種類数がとても豊富です。小鳥のさえずりなどに耳を澄ませながら林内を散策するのも楽しいものです。
いろいろなキノコ
樹木園にはたくさんの種類のキノコも生えます。キノコはカビの仲間で、落葉や倒木などを分解したり、樹木の根に住み着いて木と助け合ったり(共生)と、いろいろな方法で生活しています。樹木園では季節により、テングタケ・ベニタケ・ホコリタケ・ホウキタケの仲間・その他数多くのキノコが見られます。
2006年に発芽したブナ
当実験所の樹木園には、菅平本来の自然の姿であるブナ林を復元しようと、約600本あまりものブナが植えられています。2005年秋、そのたくさんのブナのうちの一本が初めて結実し、翌年(2006年5月)にはその木の下にブナの芽生えが見つかりました。芽生えは全部で5つあり、10cmほどで1年間の生長を終えて落葉し、厳しい冬を乗り越える準備をしていました。
当実験所の資料によると、結実したブナは、1960年ごろに3年から5年生の幼木の状態で植えられたものであり、樹齢は50年程度と推定されます。一般にブナは、樹齢50年前後になって初めて結実すると言われており、実をつけるまでにとても長い時間を必要とすることが知られています。こうしてブナが自然に芽生えたことは、ブナ林復元という目的に近づく大きな一歩であることから、本センターでは小さな芽の生長を今後も見守っていくことにしています。
オニヒョウタンボク
長野県・新潟県・中国地方の山地にとびとびに分布している珍しい木です。菅平湿原には自生していて、その赤い実には毒があります。2つの果実が基部でくっついてヒョウタンのように見えるため、この名前がついています。
スイカズラ科 学名:Lonicera vidalii Franch. et Savat.
カタクリ
園内の数箇所にカタクリの群生する場所があります。4月の終わりごろ、まだ上をおおう木々が芽吹かないうちに咲き出します。2週間ほどで花期は終わり、葉も6月の中旬までには全て枯れてしまいます。春の到来を感じさせるとてもかわいらしい花です。
ユリ科 学名:Erythronium japonicum Decne.
クロビイタヤ
菅平湿原に見られるカエデの一種で、本州中部以北にまれに見られます。果実に毛がないものを特にシバタカエデといい、これも菅平に分布しています。葉は秋には黄葉します。
カエデ科の植物の果実はつばさをもっているように見えることから「翼果(よくか)」といいます。これは、風にのせてより遠くに種をとばすために工夫をこらした形だと考えられています。
カエデ科 学名:Acer miyabei Maxim.
クロミサンザシ
北海道と菅平だけに見られる珍しい植物で、菅平湿原に自生しています。6月中旬に白い花を咲かせ、8月終わりごろから果実が黒く熟しだします。枝にはまばらに棘があります。クロミサンザシはその分布域から遺存種と考えられています。
バラ科 学名:Crataegus chlorosarca Maxim.
シラタマノキ
シラタマノキは根子岳の上部のような亜高山帯で見られる木です。6月の終わりから7月の上旬にかけて、小さいながらとても美しい花が咲きます。名前の由来である果実は8月に見られます。
ツツジ科 学名:Gaultheria miqueliana Takeda.
ハナヒョウタンボク
本州の中部以北にまれに見られる珍しい植物で、菅平湿原には自生しています。果実は赤くて美しいですが、有毒です。環境省によるレッドデータブックで絶滅危惧IB類(EN)に指定されています。
スイカズラ科 学名:Lonicera maackii (Rupr.) Maxim.
ミズバショウ
樹木園入口付近には小さな池が2つあり、そのうちの一方では毎年ミズバショウが花を咲かせます。花は5月始めに見られ、春の本格的な訪れを感じさせます。
サトイモ科 学名:Lysichitum camtschatcense (Linn.) Schott
ヤマハマナス(カラフトイバラ)
寒冷地や高山に生育し、北海道には多いですが、本州では群馬県と長野県の山地にまれに見られる植物です。ピンク色のハマナスに似た花を7月上旬に咲かせます。枝には棘があります。
バラ科 学名:Rosa davurica Pallas
レンゲツツジ
長野県の高原にはレンゲツツジの名所が多数あります。菅平にもレンゲツツジの群生地があり、開花の時期には山を赤く染めます。レンゲツツジの花や葉には毒があり、家畜が食べないことから、牧場などにも多く見られます。
ツツジ科 学名:Rhododendron japonicum (A. Gray) Suringer