「日本昆虫目録 第1巻 無翅昆虫各目」 刊行のお知らせ

地域、地域の生物相のカタログは、分類学において最も重要な情報です。しかし、これは分類学にとってだけではありません。他の生物学分野においても、同定の妥当性を検証する場合や、研究対象を生物として深く理解しようとする場合に、重要なよすがとなるでしょう。このようなカタログ作成は、種数が少なく、現時点でそのほとんどが分類学的に解明されている生物群(たとえば鳥類や脊椎動物など)では比較的容易ですが、全動物の75%を占めるといわれている昆虫類においては途方もない作業です。

一般社団法人「日本昆虫学会」は、1999年、日本から報告されたすべての昆虫について「分布情報」「原公表に関する文献情報」「原組み合わせの属」「タイプ産地」「シノニムの変遷」「重要な誤同定記録」などをできる限り収録したカタログの整備を計画し、2003年から執筆および編集作業が開始されました。原稿が完成したものから順次出版されてきましたが、このたび、菅平高原実験所昆虫比較発生学研究室の町田龍一郎特命教授(筑波大学生命環境系)が編集担当した「日本昆虫目録 第1巻 無翅昆虫各目」が刊行されました(2020年2月15日)。

本巻は、原始的な無翅昆虫類5目であるカマアシムシ目(6科26属88種)、トビムシ目(20科124属422種)、コムシ目(3科6属15種)、イシノミ目(1科7属19種)、シミ目(3科10属17種)を扱っており、日本から報告された無翅昆虫類全種の情報を網羅したものです。本書を足がかりとして、日本における無翅昆虫類の分類学が活性化され、着実に発展していくことを期待します。

「日本昆虫目録 第1巻 無翅昆虫各目」 一般社団法人 日本昆虫学会
日本昆虫目録編集委員会 編
定価 5,800円(税別)
ISBN:978-4-434-27227-1

日本昆虫目録 第1巻 無翅昆虫各目

日本昆虫目録 第1巻 無翅昆虫各目