高島勇介特別研究員が日本菌学会奨励賞を受賞
【2021年9月9日追記】今回の受賞講演が公開となりました(2021年10月10日までの期間限定)。
受賞講演はこちら>> 日本菌学会第65回大会奨励賞受賞講演 クサレケカビ属菌における菌類-細菌共生体に関する研究 高島勇介(筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所)(
2021年8月23日~29日、日本菌学会第65回大会がオンラインで開催され、筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所の高島勇介(日本学術振興会特別研究員PD、津田研究室)による「クサレケカビ属菌における菌類-細菌共生体に関する研究」が、日本菌学会奨励賞を受賞しました。
高島は、学部4年生(当時所属 茨城大学農学部)から現在に至るまで、一貫して真菌類の細胞内に生息する細菌(菌類内生細菌)の研究を行ってきました。特に、クサレケカビ属菌については、多くの種を含む網羅的な菌類内生細菌の探索を行い、その系統的多様性を明らかにしました[1]。また、その研究過程で得られた菅平高原実験所を基準標本産地とする Mortierella sugadairana を新種記載[2]したほか、特定の菌類内生細菌の存在により、本種の有性生殖が阻害されることを明らかにしました[3]。
従来、節足動物では、細胞内共生細菌により宿主の有性生殖が干渉されることが報告されていましたが、本研究により、菌類においても、細胞内共生細菌により宿主の有性生殖が阻害されることが初めて示されました。さらに、難培養性である菌類内生細菌の純粋培養にも取り組み、クサレケカビ属菌を宿主とする菌類内生細菌の中でも最小のゲノムを有する細菌の分離培養に成功しました[4]。
これらの研究成果を礎として、今後、菌類-細菌共生体に関する研究をさらに深めることで、菌学を基盤とした細胞内共生細菌研究分野の発展に貢献していくことが期待されます。
関連する研究成果
1. Yusuke Takashima, Kensuke Seto, Yousuke Degawa, Yong Guo, Tomoyasu Nishizawa, Hiroyuki Ohta, Kazuhiko Narisawa. (2018). Prevalence and intra-family phylogenetic divergence of Burkholderiaceae-related endobacteria associated with species of Mortierella. Microbes and environments, 33(4) 417–427. https://doi.org/10.1264/jsme2.ME18081
2. Yusuke Takashima, Yousuke Degawa, Hiroyuki Ohta, Kazuhiko Narisawa. (2018). Mortierella sugadairana, a new homothallic species related to the firstly described heterothallic species in the genus. Mycoscience, 59(3) 200–205. https://doi.org/10.1016/j.myc.2017.10.004
3. Yusuke Takashima, Yousuke Degawa, Tomoyasu Nishizawa, Hiroyuki Ohta, Kazuhiko Narisawa. (2020). Aposymbiosis of a Burkholderiaceae-related endobacterium impacts on sexual reproduction of its fungal host. Microbes and environments, 35 (2) ME19167. https://doi.org/10.1264/jsme2.ME19167
4. Yong Guo*, Yusuke Takashima*, Yoshinori Sato, Kazuhiko Narisawa, Hiroyuki Ohta, Tomoyasu Nishizawa. (2020). Mycoavidus sp. Strain B2-EB: comparative genomics reveals minimal genomic features required by a cultivable Burkholderiaceae-related endofungal bacterium. Applied and Environmental Microbiology, 86: e01018-20. https://doi.org/10.1128/AEM.01018-20
*Y. G. and Y. T. contributed equally to this article.