岩村田高校で変形菌講座を実施

2023年2月28日、長野県佐久市の長野県岩村田高等学校にて、「『森の宝石』変形菌ってどんな生き物?~不思議な世界の入門講座~」が開催されました。このイベントは同校事務の塩川佐都子さん、野口愛先生からのご相談を受けて、同校及び長野県野沢北高等学校の生徒さんや、先生方を対象に開催された自主企画です。講師は、筑波大学生物学類4年生の上辰俊広君が担当し、筑波大学大学院の吉橋佑馬君と、菅平高原実験所の出川洋介(生命環境系 准教授)がサポートをしました。

はじめに、寒天培地上でオートミールを餌に飼育しているモジホコリの変形体の観察を行いました。光学顕微鏡で、原形質流動の様子や、弛緩収縮に伴う、流動方向の逆転を観察してもらいました。また、変形体を自宅で培養する簡易的な方法を学びました。参加者の中には今後の研究授業等で使用するために、変形体を持ち帰り培養に挑戦する方も見られました。

次に、変形菌の子実体の標本作成を行いました。材料として、金属のような光沢をもち、非常に外見が美しいことが特徴であるルリホコリ属の子実体を用いました。また、本講座の実施日は本種の発生時期ではなかったため、スタッフがあらかじめ昨年の春に採集した子実体を用いました。各参加者が専用の標本箱を組み立て、データを記入し、標本を作る体験をしました。また、作成した標本は長期間の保存が可能なため、希望者には持ち帰ってもらいました。

こうして作成した標本を使って今度は、変形菌の種同定に挑戦しました。ピンセットで子実体を一本つまみとり、エタノールとホイヤー液でプレパラートを作り、光学顕微鏡で観察しました。上辰君があらかじめ用意しておいてくれた検索表資料を用いて、めいめいが、特徴的な構造をもとに、ルリホコリ属のどの種なのかを調べました。観察される特徴の中には他種との違いが分かりづらいものもありましたが、全ての参加者が正しい種同定をすることができました。

参加した生徒さんや先生方からは「身近にありながら、気づくことの無い菌について知ることができた。」「貴重な時間を過ごすことができました。」といった感想が寄せられました。

文・上辰俊広・出川洋介

光学顕微鏡での観察
上辰俊広君による解説
熱心に話を聞く高校生たち

関連ページ>> 2月28日 不思議な世界の入門講座(長野県岩村田高等学校)

【2023.4.14追記】この件については佐久市民新聞(2023年3月10日発行)と小諸新聞(2023年3月17日発行)に掲載されました。