ボランティアが標本について学ぶ

菅平高原実験所では、菅平ナチュラリストの会のメンバーを中心としたボランティアの方と一緒に、毎月押し葉標本の整理を進めています。6月15日は特別会として長野県環境保全研究所より2名の講師をお招きし、17名の参加者が標本について理解を深めました。

この日にお越しいただいたのは長野県環境保全研究所主任研究員の尾関雅章さんと、同研究所環境保全研究員の荒井沙由理さんです。同研究所は約20万点の腊葉標本などを収蔵する標本庫があり、国際的にも認知された施設となっています。同研究所と山岳科学センターは2018年に連携協定を締結しており、このたびボランティアへのご指導を依頼したところ快く引き受けていただきました。

まずは尾関さんより「植物標本の作り方とその活用」と題して、標本の意義についてご講演いただきました。長野県内の集積状況や標本情報の活用方法、今後の課題などを分かりやすく解説いただき、参加者は標本をとりまく最新の状況を知ることができました。また、植物標本の作り方に関する講演では、草本と木本それぞれの注意点に加え、イネ科やシダ植物を扱う際のポイントも教えていただきました。参加者からは非常にたくさんの質問が寄せられ、そのひとつひとつに尾関さんが答えていました。

次に、荒井さんによる実技指導として、押し葉を台紙に貼り付ける作業を実演いただきました。ピンセットで和紙をつかみ、ときに爪楊枝も使いながら押し葉を丁寧に固定していくようすを、参加者は熱心に見ていました。こちらも途中でたくさんの質問に答えていただき、最後に作業が終わると、その美しい出来栄えに歓声があがりました。

この日は当初午前中のみの予定でしたが、参加者から「教わったことをふまえて早速作業してみたい」という声が上がりました。そこで午後に数名が残り、押し葉貼り付け作業を行いました。その場にいた荒井さんもようすを見てアドバイスしてくださり、参加者は楽しそうに作業していました。

今回、専門家である尾関さんと荒井さんから教えていただけたことで、参加者は標本整理の意義を学び、作業への自信を持ったようすでした。この日に学んだ内容をしっかりと記録し、参加できなかった方や今後標本整理に関わりたい方へ伝えられるようにしていく予定です。

尾関雅章さん
尾関雅章さん
荒井沙由理さん
荒井沙由理さん
実演を見つめるボランティアたち

この活動は昨年から開始した「みんなの標本庫」計画の一環で、今年度は日本科学協会の2023年度笹川科学研究助成「一般市民との協働による生涯学習の場『みんなの標本庫』での菌類及び地衣類標本整備に向けた手法開発」により遂行しています。

押し葉を貼る作業は毎月第3水曜日(変動あり)の午前中に実施しています。活動にご興味のある方は下記までメールでお問い合わせください。

メール(山中) ikimono_srs#@#un.tsukuba.ac.jp(#@#を@に置き換えてください)