開催報告|なつやすみ菌類観察会
2024年8月6日、子供たちに菌類に親しんでもらおうと、菅平高原実験所にて「なつやすみ菌類観察会」を開催しました。このイベントは日本菌学会に後援いただき、また、日本科学協会の2024年度笹川科学研究助成「一般市民との協働による標本庫APG体系移行と教材用菌類標本整備及び青少年の参加促進に向けた手法開発」により実施しました。
今年が初めての開催となるこのイベントは、小学生から高校生とその保護者を対象とし、事前申込で実施しました。当日は小学生11名、中学生と高校生各2名、保護者13名の計28名が参加し、埼玉、茨城、群馬から来た方もいました。講師は菅平高原実験所の出川洋介(生命環境系 准教授)で、菅平菌学研究室の学生4名とナチュラリスト4名にもサポートいただきました。
午前はフィールドで菌類採集を行いました。出川による採集方法の説明のあと、ビニール袋と新聞紙を手にした参加者は林縁や芝地でキノコを見つけ、早速喜んで採集していました。シラビソの下には根元を囲むようにキノコが生えていて、子供も大人も歓声を上げていました。
それから一行はアカマツ林へ入り、地面や枯木を丁寧に見ながら菌類を探しました。今年は菅平でも暑さが厳しく、そのためか林内は一見キノコが少ないようでしたが、子供たちは小さなものから大きなものまで次々にキノコを見つけ、保護者も一緒になって楽しんでいました。ある子供がクロハツに生えるヤグラタケを見つけると、他の参加者が「初めてみた!」と喜んで写真を撮っていました。
午後は採集物を並べ、この日に取れたものを確認しました。出川がベニタケ科、テングタケ科、キシメジ科など、科の特徴を挙げながら一つずつ説明し、それを聞いて一生懸命メモをとる子供がいました。ときには子供に手伝ってもらい、オニイグチを傷つけて変色させたり、スッポンタケの幼菌を割ってみたりと、皆で菌類を囲み盛り上がっていました。子供のなかには菌類が好きでとても詳しい子が何人もおり、出川が感心する場面がありました。
終了の時間が迫ってきたころ、最後に「胞子紋」を観察しました。午後のスタート時に柄の部分をカットしたキノコを黒画用紙に伏せておき、約1時間半後に持ち上げると胞子の紋様ができていました。きれいにできていた親子は、嬉しそうに写真を撮っていました。キノコが未成熟だったなどでうまくいかなかった親子には、出川が「スーパーのキノコでもやってみて」と声をかけていました。
参加した子供からは「すごく楽しかった」「いろいろな色のキノコが見られた」「先生や大学生がキノコにとても詳しくて、全部の質問に答えてくれて嬉しかった」「キノコを調べるときのポイントが分かった」といった声が聞かれました。また、保護者からも「自身は菌類に興味がなく、今回は子供の付添として参加したが、新しい発見がたくさんあった」「一緒に楽しめた」などの感想が寄せられました。 今回のイベントをきっかけに、より深く自然を知りたいという気持ちが育ち、子供たちの将来に繋がれば嬉しいです。
【2024.8.19追記】2024年8月9日発行の東信ジャーナルでこのイベントが紹介されました。