2月20日 陸域生物学実習&動物学野外実習をレポート!
2月20日 陸域生物学実習&動物学野外実習をレポート!
2月18日(月)から同22日(金)にかけて、筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所において、「陸域生物学実習」(院生向けとして「動物学野外実習」)が開催されました。
今回お伝えするのは、そのプログラムのなかの第3日目、「野鳥等観察編」です。
まずは出発前のガイダンスから。
今日の実習のポイントなどについて、町田教授の口からは、軽快なお話がポンポンと飛び出します。学生たちも興味津津といった様子。
はやる気持ちをおさえて、まずは座学をしっかりと。
ほら、君たちの長靴も、スタンバってるぞ!
今回、学生たちはそれぞれの研究テーマごとに、5つのグループに別れて実習に参加しています。下の黒板は光ってよく見ませんが、第一班のテーマだけははっきりと読めます。
「穴を探せ!(ヤマネを求めて三千里)と。
さあ、出発だ! 最初にネズミの穴を見つけてみよう!
長靴を履いて、いよいよ出発だ。
菅平高原実験所の敷地内には、まだ雪が大量に積もっている。
最初の課題は「ネズミの穴を見つけてみよう」というもの。
学生たちは、目をこらしながら敷地内の道を進んでいく。
ところが残念なことに、昨夜来の雨がネズミ穴の周りを溶かしてしまって、なかなか見つけることができない。
「確か去年は、このへんでいくつか見つけたんだけどな……。」
と、TAを務める山本くん(菅平高原実験所・院生)も、少し残念そう。
ネズミが出入りすることで穴の周りがツルツルしているので、そういうところを探せばよいと、同じくTAの武藤くん(菅平高原実験所・院生)からもアドバイスが入るが、それでも穴は見つからない。
そうこうしているうちに、山本くんが狐の新しい足跡を発見。おまけに糞も。
「このウンコには動物の毛も混じってるぞ。」
これも研究材料だといって、動物の足跡などを追跡しているグループに糞の採取を促す。さすがは、転んでもただでは起きない山本くんだ。
カケスに騙された!
野鳥の声に耳を澄ませながら、実験所の敷地を出て公道へ。
すると、突然、けたたましい鳴き声が!
「何かな?」
と町田教授。
「アカゲラですね。大層な声を出したところをみると、きっと何かにびっくりしたのだと思います。」
武藤くんがすかざす答える。
かつて、日比谷(日比谷高校)のファーブルといわれた武藤くんは、鳥にもめっぽう詳しい。
すると町田教授が、
「カケスっていう鳥がいるでしょう。あの鳥はね、ほかの鳥の物真似をするんだよ。前に、コジュケイの声で鳴いたカケスがいたな。」
女子学生から一斉に、ため息ともつかない声が挙がる。
「へえ~。」
時を忘れて、みなで双眼鏡を覗き込む。
至福のひととき。
うららかに青い空に日は照り、遠く四阿山はまだ深い雪の下だ。
カワゲラパラダイスだ! まつりだよ!
遠く近くに野鳥の声を聞きながら、皆で公道を進んでいくと、先頭を歩いていた八畑講師から大きな声が挙がった。
「わあ、カワゲラだ。カワゲラパラダイスだ! まつりだよ!」
声のする方を注目すると、確かに、大量のカワゲラが、ガードレール脇の雪上を移動している。
その数、幾百、幾千匹とも知れず。
カワゲラがこの冬空に、いったい何をしているのか?
カワゲラといえば武藤くんの専門だ。そこで、彼をつかまえて、いくつかの質問を試みた。
「カワゲラたちは、いったいどこへ向かっているのですか?」
「彼らはこの川の上流で産まれましたが、下流に流され、そこで羽化したのです。そして、これから、産まれた場所(上流)に還っていくところなんです。」
「そこで何をするのですか?」
「産卵をします。」
「どうして行進していくんですか?」
「この時期に産まれるカワゲラには羽がないので、はっていくしかないのです。」
「なかには、戻っていってしまうものもいますが、どうしたのでしょうか?」
「彼らは太陽をコンパス代わりに上流を目指して行きますが、昼近くになって、一時的に方向を見失っているのかもしれません。」
「トビケラという昆虫がいますが、カワゲラの仲間ですか?」
「いいえ、トビケラはどちらかというと蝶に近い昆虫で、蛹になります。でも、カワゲラは蛹になりません。進化的には、トビケラよりも古い虫だと考えられています。」
「ところで、このカワゲラはなんというカワゲラですか?」
「ミヤモトクロカワゲラです。」
さすがは虫博士、回答にいささかの淀みもない。
びちょびちょぴーぴーぴー
大明神沢の橋までやってくると、熱心に水浴びをしている鳥が目についた。
水浴びをしては高い梢まで舞い上がり、互いに澄んだ声で鳴き交わしている。
ヒバシリではないか、ということになったが、ヒバシリは留鳥(渡りをしない鳥)のなかでも、なかなか目撃できない鳥として知られているのだそうな。
で、さすがの講師陣も確信が持てない。
そこで、
「ググってみー。」
ということになった。
素直にググった女学生がのたまった。
「びちょびちょぴーぴーぴー」
「いや、そうじゃなくて、実際の鳴き声を聞かせてよ?」
「ここで鳴らしてもいいんですか?」
「いいよ」
女学生のスマホから、ヒバシリの鳴き声が響きわたる。
すると、そのさえずりに応えるかのごとく、梢からスマホとまったく同じ鳴き声が降ってきた。
「ああ、やっぱりヒバシリだ、ヒバシリだ。」
学生そっちのけで、講師陣がいたく感動している。
ここから先は、ヒバシリとの交歓の場となった。
あれだ!
武藤くんが高い高い梢の一点を指差す。
学生たちから感動の声が挙がった。
「やあ、やあ、今日はヒバシリまつりだ! もう帰ってもいいや。満腹だ!」
どうやら八畑講師はまつり好きらしい。
「ヒバシリって初めて聴いたよ。」
「あんな声出すんだ。」
「鳴いているわ。」
「鳴いているね。」
「あ、あっちへ行った。」
「飛んでっちゃった。」
ほかにも、コゲラ、エナガ、キクイタタキなどがやって来て、自慢の喉を披露してくれた。それから、ニホンリスもやってきて、愛くるしい姿を皆の目に焼き付けてくれた。
参加された学生さんかひと言
最後になりましたが、この実習に参加された学生さんの感想を記しておきます。筑波大学以外の大学からやってきてくれた2人の学生さんのコメントです。
☆生物を中心に勉強されてきた学生さんたちと交流し、その発想力や好奇心に大きな刺激をうけました。また、自分たちでテーマを決めて研究することができたので、よい経験になりました。できれば、もっと日数をかけて調査したかったです。
☆様々な発見があり、まだまだ知りたいことがたくさんあるので、もっと菅平で研究したいと思いました。筑波大学の皆さんも優しくて、快適に過ごすことができました。本当に楽しかったです。