シラビソの幹の太さは樹皮下キクイムシの1種トドマツノキクイムシによる加害とその後の樹木の死亡に影響を与える

東京都立大学の高木悦郎助教(元・菅平高原実験所 特任助教)のグループと筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所の正木大祐技術職員は、東アジアでモミ属の大量枯損を引き起こしているトドマツノキクイムシについて、寄主植物の大きさ(幹の太さ)が加害と寄主のその後の死亡に与える影響を明らかにしました。

近年、ロシアや日本で、樹皮下キクイムシの1種であるトドマツノキクイムシによる被害が顕在化しています。筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所の樹木園では、10年ほど前から、トドマツノキクイムシによるシラビソの枯損が確認されています。

以前の調査では、幹が細いほどトドマツノキクイムシによる加害を多く受け、幹が太い木は大きな加害を受けても枯死していないことが示唆されていました。しかし、加害を受けた樹木のその後については十分には明らかになっていませんでした。

そこで、再び調査を行ったところ、この6年間でトドマツノキクイムシによる加害は増加しており、それによる枯損木も増加していました。また、幹が太い木への加害も増加していたものの、幹が太いほど枯損率は低いことが明らかになりました。この結果から、トドマツノキクイムシによる加害によって、幹の細い木は枯損してしまっても、太い木が種子源となることが示唆されました。

タイトル:Trunk diameter influences attack by Polygraphus proximus and subsequent mortality of Abies veitchii (シラビソの幹の太さは樹皮下キクイムシの1種トドマツノキクイムシによる加害とその後の樹木の死亡に影響を与える)

著者:高木悦郎*,正木大祐,武井進也,小林憲太(*責任著者)

雑誌名:Forest Ecology and Management

DOI番号:doi.org/10.1016/j.foreco.2020.118617

論文URL:https://doi.org/10.1016/j.foreco.2020.118617