半世紀前に記載された糸状菌が藻類に発生することを解明

筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所の高島勇介(特別研究員)は、菅平高原にある自宅前の農道に生じた藻類枯死斑を観察していたところ、フウセンモという藻類の仲間から糸状菌が発生していることを確認しました(図)。そこで高島、出川洋介(生命環境系 准教授)、中山剛(同)のグループにより、その糸状菌の詳細な観察および分子系統解析を行った結果、この菌が1952年にイタリアのブドウ園の土壌から見つかった Emericellopsis mirabilis という種であることを突き止めました。

本種はこれまで、「コケの原始体」が分離源であるとされていましたが、今回の再発見と当時の研究を比較し、当時の研究者はフウセンモという藻類の仮根と「コケの原始体」の区別ができていなかった可能性を議論しました。本件は、これまでほとんど研究されてこなかった陸生藻類に寄生する糸状菌に関する研究であり、身近な環境にまだまだ未知の生物間相互作用が存在することを示しています。

この研究成果は2021年7月20日、日本菌学会が発行する国際誌「Mycoscience」に掲載されました。

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図.フウセンモに発生した糸状菌 Emericellopsis mirabilis。緑の丸い部分(フウセンモの頂のう)から E. mirabilis の分生子柄(胞子を形成する構造)が多数発生している

書誌情報: Yusuke Takashima, Takeshi Nakayama, Yousuke Degawa. (2021). Revisiting the isolation source after half a century: Emericellopsis mirabilis on a yellow-green alga. Mycoscience, 62 (4) 260–267.

詳しくはこちら>>  https://doi.org/10.47371/mycosci.2021.03.009