性染色体の遺伝解析で追う雄ジカ達の歴史 - 新開発の遺伝マーカーによって雄の種内系統とその分布形成過程を解明へ-

福島大学の高木俊人(共生システム理工学研究科 博士後期課程2年)、兼子伸吾(共生システム理工学類 准教授)、筑波大学の津田吉晃(生命環境系 准教授)、奈良教育大学、山形大学、森林総合研究所のグループによる研究成果が、このたびプレスリリースされました。

本研究は、野生動物管理に関する筑波大学山岳科学センター機能強化プロジェクト(代表・津田)の一環として行われました。目下、長野県の野生動物の保護管理については、より学際的アプローチで2021年度住友財団・環境研究助成(代表・津田)においても研究を進めています。

本研究のポイント
  • 母親のみから遺伝するミトコンドリアDNAの解析は、ニホンジカの種内系統分類や個体群管理などに利用されてきました。
  • ミトコンドリアDNAは、その遺伝的特性のために雌を介した種内の系統や多様性のみを反映しています。
  • しかし、拡大傾向にあるシカの適正管理のためには、出生地付近に定着することの多い雌だけでなく、出生地を出て広範囲を移動することの多い雄の種内系統や多様性についても明らかにする必要があります。
  • そこで、ニホンジカの雄の種内系統やその分布を分析可能な遺伝マーカーを新たに開発しました。
  • この遺伝マーカーによって得られる遺伝学的情報は、過去や現在の移動パターンの推定に利用可能であり、社会問題となっているニホンジカ分布拡大に関する理解や将来予測、外来シカとの交雑判定など、広い範囲での応用が期待されます。

【タイトル】 Development of paternally-inherited Y chromosome simple sequence repeats of sika deer and their application in genetic structure, artificial introduction, and interspecific hybridization analyses.

【著者】Toshihito Takagi, Yoshiaki Tsuda, Harumi Torii, Hidetoshi B Tamate, Shingo Kaneko, Junco Nagata

【著者の所属】高木 俊人(福島大学共生システム理工学研究科 博士後期課程2年)、津田 吉晃(筑波大学生命環境系・山岳科学センター菅平高原実験所・八ヶ岳演習林 准教授)、鳥居 春己(元奈良教育大学 自然環境教育センター)、玉手 英利(山形大学)、兼子 伸吾(福島大学共生システム理工学類 准教授)、永田 純子(森林総合研究所 野生動物研究領域 鳥獣生態研究室 室長)

【掲載誌】Population Ecology(個体群生態学会 国際誌)

【公開日】2022年1月26日付でオンライン公開

【DOI】10.1002/1438-390X.12109

【リポジトリ】本論文の投稿原稿は福島大学リポジトリFUKUROにて1月27日以降に公開予定(https://ir.lib.fukushima-u.ac.jp/repo/repository/fukuro/

詳細はこちら>> プレスリリース

関連リンク>> 性染色体の遺伝解析で追う雄ジカ達の歴史-新開発の遺伝マーカーによって雄の種内系統とその分布形成過程を解明へ-(筑波大学プレスリリース)

【2022年1月17日追記】

この研究については、下記メディアでも紹介されています。

福島民友新聞(みんゆうNet)>> 雄ジカの系統分析、移動パターン推定 福島大、遺伝マーカー開発