千葉県の房総半島東岸で採集されたハゼ科魚類「トビハゼ」

筑波大学生命環境科学研究科の山川宇宙(生物科学専攻博士課程後期)、筑波大学生命環境系の津田吉晃准教授(菅平高原実験所・八ヶ岳演習林)らの研究グループは、千葉県の房総半島東岸の河口域でハゼ科魚類「トビハゼ Periophthalmus modestus」を採集し、南紀生物同好会が発刊する会誌「南紀生物」で報告しました。

トビハゼは、主に東京湾以西の内湾や河口域に発達した泥質の干潟に生息する、ハゼ科の魚です。一般的な魚と異なり、陸上でも皮膚で空気呼吸を行うことができるため、干潟の上を匍匐する、さらには跳躍するなどのユニークな生態を持っています。しかし、今現在、干潟環境は開発や埋め立てなどによって全国的に減少しており、本種の生息も危ぶまれています。

著者らは2020年7月に千葉県の房総半島東岸の河口域において、魚類の採集調査を行いました。その結果、トビハゼ1個体が採集されました。採集地点は従来の分布東限である東京湾より東に位置しており、この個体は東限記録となりました。

今回、本種が発見された房総半島東岸の河口域には、良好な泥質の干潟環境が残されており、トビハゼの生息には適していると考えられます。今のところ、採集地点に本種が定着している様子はありませんが、近い将来、東京湾以西から黒潮などの海流によって移動分散してくる個体が増えれば、新たな生息地として確立する可能性もあります。そのため、今後も同地点において、本種の出現動向をモニタリングするとともに、現在の干潟環境を保全していくことが望まれます。

タイトル(日本語):千葉県房総半島東岸で採集された東限記録のトビハゼ

タイトル(英文):Easternmost record of the mudskipper Periophthalmus modestus from the east coast of the Boso Peninsula, Chiba Prefecture, eastern Japan

著者名(和文):山川 宇宙、内田 大貴、津田 吉晃

著者名(英文):Uchu Yamakawa, Daiki Uchida and Yoshiaki Tsuda

雑誌名:南紀生物

巻数・頁:第64巻 第1号 81~84頁

出版日:2022年6月10日

本研究で採集されたトビハゼ Periophthalmus modestus