開催報告|市民向け講座 長野県内で分布拡大する外来魚の生態と遺伝(まちなかキャンパスうえだ)

2022年11月26日、まちなかキャンパスうえだ市民向け講座「長野県内で分布拡大する外来魚の生態と遺伝」がオンライン開催されました。この講座は長野県上田市との協働で開催され、菅平高原実験所・八ヶ岳演習林の津田吉晃(生命環境系 准教授)がオーガナイザーを務めました。

今回の講座では、長野県内で分布拡大が懸念されているブラックバス(コクチバス)とブラウントラウトに焦点を当てました。まず初めにブラックバスについて、北野聡氏(長野県環境保全研究所)に千曲川の魚類の生物多様性の変化、コクチバス分布状況についてお話しいただき、続いて Miles Peterson 氏(信州大学大学院)に、バス釣りで有名な長野県・野尻湖のコクチバスが在来魚にどのように影響を与えているかお話しいただきました。

ブラウントラウトについては、長谷川功氏(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所 さけます部門)に、ブラウントラウトなど外来サケ科魚類や北海道内の分布状況についてお話しいただきました。また、神藤友宏(筑波大学大学院山岳科学学位プログラム)には、現在取り組んでいるブラウントラウトの集団遺伝学データから推定した国内の導入経路について報告してもらいました。いずれも各講師の現地あるいは試験地内の生態学的調査や実験に基づいた研究を紹介いただき、外来魚が自生生態系に与える影響などをわかりやすく講義いただきました。

これまでは「外来魚=悪者=駆除」という見方が主流でしたが、昨今は SNS の普及もあり、「外来魚にも命がある」「かわいそう」「観光資源になる」など社会には外来魚に対する様々な意見があります。一方、今回の講義対象種は国外外来種(本来日本に自生しない魚)でしたが、国内外来種(自生地域から別地域に導入された魚)について社会的な認識も高まりつつあります。このようななかで研究者、行政、市民ら各関係者がいかにして外来魚管理の合意形成を行うかについて、津田が講座の趣旨説明、意見交換の時間にお話ししました。 山岳科学センターでは外来魚種を含めた野生動物管理を重点課題として、研究に取り組んでいます。

文・津田吉晃

長野県内で分布拡大する外来魚の生態と遺伝