開催報告|公開講座 発酵食品の世界 ~「手前味噌」を探る~

2023年5月21日、菅平高原実験所にて、令和5年度筑波大学公開講座「発酵食品の世界 ~「手前味噌」を探る~」を開催しました。この日は7名が受講し、午前は公益財団法人鉄の歴史村地域振興事業団の岩城こよみさんによる講義、午後は出川洋介(生命環境系 准教授)による講義と実習が行われました。

民俗学者である岩城さんの講義では「味噌の民俗 ―ウチミソの力―」と題し、ウチミソ(自家醸造味噌)を長年にわたり調査、研究されてきた成果についてご紹介いただきました。これまで25都道府県を訪ね歩き、各地の伝承をたくさんの人々から聞き取ってきたという貴重なお話に、受講者は静かに聞き入っていました。

講演後の質疑応答ではいくつもの質問が寄せられ、岩城さんがひとつずつ丁寧に答えていました。また、ゲストとして参加した味噌屋の方や、自宅で味噌玉を作っている方からの情報提供もあり、受講者が長野県内のウチミソについて考えるきっかけにもなりました。

午後は出川が担当し、最初に微生物の基礎や発酵のしくみについて解説しました。そして光学顕微鏡と実体顕微鏡を使い、用意してあったコウジカビ、アオカビ、ケカビなどを全員で観察しました。実技指導員の大学院生に加え、ナチュラリスト(ボランティアスタッフ)もサポートを行い、受講生は微細な構造を楽しそうに観察していました。

今回の講座により、日本の伝統食である味噌について民俗学と生物学による知見を受講者に提供することができました。受講者からは「楽しかった」「また受けたい」といった声が寄せられました。

講演「味噌の民俗 ―ウチミソの力―」。
岩城こよみさん。
質疑応答。たくさんの質問が寄せられました。
出川による微生物の基礎や発酵のしくみについての解説。
顕微鏡観察。岩城さんもご一緒に(左端)。
顕微鏡の操作を出川やスタッフがサポート。
各自で光学顕微鏡と実体顕微鏡を使って観察。