福島県で採集された暖水性の動物5種

筑波大学生命環境科学研究科の山川宇宙(生物科学専攻博士課程後期)、筑波大学生命環境系の津田吉晃准教授(菅平高原実験所・八ヶ岳演習林)、株式会社環境指標生物の内田大貴氏、茨城県農林水産部水産振興課の外山太一郎氏の研究グループは、福島県の河川で暖水性の水生動物5種(テンジクカワアナゴ、ボウズハゼ、ミナミテナガエビ、ヒラテテナガエビおよびオオヒライソガニ属の一種)を採集し、査読付き和文誌「水生動物」で報告しました。

福島県の沖合には、親潮由来の寒流と黒潮由来の暖流が流れ、同県の沿岸域や河川には温帯性の水生動物の他に、冷水性および暖水性の水生動物も出現します。特に近年は地球温暖化や人工的な温排水の影響により、野外水域の水温が上昇しており、暖水性の水生動物の出現頻度や個体数が増加している可能性があります。

著者らは2021年および2022年に福島県の1河川において、水生動物の採集調査を行いました。その結果、暖水性の水生動物であるテンジクカワアナゴ、ボウズハゼ、ミナミテナガエビ、ヒラテテナガエビおよびオオヒライソガニ属の一種が採集されました。特にテンジクカワアナゴは今まで茨城県以南からしか記録がなかった種であり、出現の北限を更新しました。

テンジクカワアナゴ、ボウズハゼ、ミナミテナガエビおよびオオヒライソガニ属の一種は、今のところ、採集地点において定着している可能性は低いと考えられました。一方で、ヒラテテナガエビは、多数の個体が採集されており、また、1歳もしくは2歳と推測される個体が採集されたことから、採集地点において越冬していると考えられました。

今後も地球温暖化の影響により、福島県に暖水性の水生動物が出現し、水生動物相が変化していく可能性が高いため、その傾向をモニタリングしていくことが望まれます。

タイトル(日本語):福島県いわき市の河川で採集された暖水性の水生動物5種

タイトル(英文):Records of five warm-water aquatic animal species from a river in Iwaki, Fukushima Prefecture, Japan

著者名(和文):山川 宇宙、内田 大貴、外山 太一郎、津田 吉晃

著者名(英文):Uchu Yamakawa, Daiki Uchida, Taichiro Toyama and Yoshiaki Tsuda

雑誌名:水生動物

巻数・頁:第2023巻 AA2023-14

出版日:2023年8月2日

Doi:https://doi.org/10.34394/aquaticanimals.2023.0_AA2023-14

ヒラテテナガエビ(写真提供 内田大貴氏)
ヒラテテナガエビ(写真提供 内田大貴氏)