菌類分類学野外実習/菌類多様性野外実習を実施
2024年9月9日~14日にかけて、「菌類分類学野外実習(学部生対象)」および「菌類多様性野外実習(大学院生対象)」が実施されました。本実習は筑波大学山岳科学センター教育関係共同利用拠点公開実習として、他大学にも公開されています。筑波大学生物学類19名、東邦大学理学部1名、近畿大学農学部1名、大阪教育大学1名、大阪市立大学1名、東北大学農学部1名、北海道大学農学部1名、千葉大学理学部2名、信州大学大学院2名、山梨大学大学院1名の計30名が履修、教員2名、TA5名体制で実施しました。
この実習は一週間をかけて、菌類全体の代表的な分類群をほぼ網羅的に観察しようという意欲的なものです。初日の月曜日に様々な培養を仕込んだ後、火・水曜日は午前中屋外に出て担子菌類(キノコやサビ病菌)、子嚢菌類(チャワンタケや冬虫夏草など)を採集して持ち帰り、午後は顕微鏡観察。木曜日午前は接合菌類(ケカビやハエカビ)、午後は鞭毛菌類(ツボカビ、コウマクノウキン、卵菌)を観察、金曜日は粘菌類を屋外で探して午後は標本作製種同定に挑戦、10枚近いスケッチを仕上げ、最終日の土曜日に成果発表をするというハードスケジュールでした。
期間中は幸い素晴らしい天候に恵まれ、皆さん最終日まで大変熱心に取り組んでくれました。たまたま調査で来訪された横浜国立大学の瀬戸さん(ツボカビ)、筑波大学の山岡先生(植物病原菌)、森林総合研究所の佐藤さん(昆虫腸内菌)には、無茶ぶりでしたがミニレクチャーをお願いし、快く引き受けていただき、学生たちから多くの質問が寄せられました。
今年は8月以後の雨が多く、高温高湿度の条件が菌類にとって良かったのでしょう。キノコも粘菌も豊作で、冬虫夏草は10種近くも発見されました。30名の学生の皆さん全員が真摯に観察に取り組んでくれた結果です。様々な新発見もあり、スタッフにとっても多いに勉強となり刺激となった実に良い実習でした。長い人生の中で一番、菌類漬けとなった一週間だったと思います。それぞれのキャンパスに戻ってからも、今回の実習で体得した菌類への理解を活かし、菌を通した自然の理解をさらに深めてもらえたら幸いです。皆さん、本当にお疲れ様でした。
(文・出川洋介)