菅平高原実験所で長野県初記録の水生昆虫「ホクトダルマガムシ」が採集される

内田 大貴 氏(株式会社 環境指標生物)、林 成多 博士(ホシザキグリーン財団 ホシザキ野生生物研究所)と、菅平高原実験所の山川 宇宙(生物科学専攻 博士後期3年)、熊瀬 卓己(山岳科学学位プログラム 博士前期1年)、菅平高原実験所・八ヶ岳演習林の津田 吉晃(生命環境系 准教授)の研究グループは、菅平高原実験所構内において長野県初記録となるホクトダルマガムシ Hydraena hokuto Hayashi et Iwata, 2023 を採集し、日本甲虫学会の和文誌「さやばね ニューシリーズ」で報告しました。

ホクトダルマガムシは、林博士らによって2023年に新種記載された、大きさ約2 mmになるダルマガムシ科の水生昆虫です。今まで山梨県と石川県からのみ発見されていました。

著者らは2024年4~5月に、長野県上田市菅平高原にある「筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所」敷地内の人工池(図A)で水生昆虫や両生類を観察していた際に、正体不明のダルマガムシ科の一種を採集しました。この標本(図B)について、内田氏と林博士が形態精査を行ったところ、ホクトダルマガムシであることが判明しました。この成果は、長野県における本種の初めての確認事例となります。

この人工池は標高1,320 mに位置し、普段は湿地のような状態になっています。積雪時には雪に埋まる一方で、融雪時期には水量が大幅に増し、ホクトダルマガムシも同時期に確認されました。

今後は、1年を通して観察を実施し、本種の生息状況や生態をより詳細に把握することが望まれます。

A 菅平高原実験所にある人工池(2024年10月31日 熊瀬撮影)、B 採集されたホクトダルマガムシ(2024年10月31日 内田撮影)
A 菅平高原実験所にある人工池(2024年10月31日 熊瀬撮影)、B 採集されたホクトダルマガムシ(2024年10月31日 内田撮影)

論文タイトル:長野県におけるホクトダルマガムシの初記録

著者名:内田 大貴、山川 宇宙、熊瀬 卓己、津田 吉晃、林 成多

雑誌名:さやばね ニューシリーズ

号数・ページ:第55号 46~47ページ

出版日:2024年9月30日