福島大学実習利用報告書より
2024年8月26日~30日、福島大学共生システム理工学類生物環境コースのコース実践科目が菅平高原実験所で実施されました。提出された実習利用報告書の公開許可に基づき、一部抜粋して報告します。
実習名:自然環境調査法(学部2年生以上が対象)
担当教員:塘 忠顕(福島大学共生システム理工学類 教授)
受講人数:10名(学部学生)2名(大学院生)
●実習・セミナーの内容
1.中部地方の高原・山岳地域に生育する植物と東北地方南部の平野部の草地に生育する植物が共通していることを現地での観察を通して学ぶ。
2.昆虫を目(order)レベルで認識できるようになることを目標に,草原,森林,土壌,河川において昆虫を採集し,標本の作製方法,同定方法を学ぶ。
3.森林土壌中に生息する土壌動物の観察を通して,土壌中の食物網の実際を理解する。
4.根子岳を登山しながら各種植物の生育環境,分布,フェノロジーの違いを理解する。
●実習の成果
実習開始前は天候不良が心配されたが,根子岳の調査登山も雨には降られず,その他もプログラムの順番を入れ変えるなどの対応によって,すべてを順調に消化することができた(4日目午後の室内作業中は雨天であった)。受講生は草原からアカマツ林入口までの間に頻出する植物の名前を覚えることができた。また,目レベルで昆虫を識別できるようになり,種類に応じた標本の作製方法,採集方法,水生昆虫類,チョウ類,トンボ類については科や種レベルでの同定ポイントを身につけることができた。根子岳での植物フェノロジー調査では,調査登山と事後の調査結果の共有を通して,植物各種の分布特性や種によってフェノロジーが異なることを理解することができた。5日間の実習を通して「現地でじっくりしっかり生物を観察する」,「生物の形態を比較し,違いを認識する」をTAを含む参加者全員が体験し,自然環境を調べる上での基礎と基本を身に付けることができた。
(写真提供/塘忠顕教授)
●菅平高原実験所を利用した感想など
毎年のことであるが,食事,入浴などの準備を自分たちですることなく実習に専念できること,実体顕微鏡,ツルグレン装置,展翅板,捕虫網の柄,大型乾燥機を持参しなくても良いこと,多種の草原生植物の観察や多様性に富んだ昆虫の採集や観察のためのフィールドが宿泊施設や実習室に隣接しているため,野外活動と室内作業をほぼ同時に実施できることなど,実習を行う上で実験所の環境は最適である。この施設で実習が実施できることを毎回本当にありがたく思っている。