福島大学実習利用報告書より

2025年8月18日~22日、福島大学共生システム理工学類生物環境コースのコース実践科目が菅平高原実験所で実施されました。提出された実習利用報告書の公開許可に基づき、一部抜粋して報告します。

実習名:自然環境調査法(学部2年生以上が対象)

担当教員:塘 忠顕(福島大学共生システム理工学類 教授)

受講人数:6名(学部学生)1名(大学院生)

●実習・セミナーの内容

1.中部地方の高原・山岳地域に生育する植物と東北地方南部の平野部の草地に生育する植物が共通していることを現地での観察を通して学ぶ。

2.昆虫を目(order)レベルで認識できるようになることを目標に,草原,森林,土壌,河川において昆虫を採集し,標本の作製方法,同定方法を学ぶ。

3.森林土壌中に生息する土壌動物の観察を通して,土壌中の食物網の実際を理解する。

4.根子岳を登山しながら各種植物の生育環境,分布,フェノロジーの違いを理解する。

●実習の成果
天候に恵まれ,予定していたすべてのメニューを順調に消化することができた。受講生は草原からアカマツ林入口までの間に頻出する植物の名前を覚えることができた。また,目レベルで昆虫を識別できるようになり,種類に応じた標本の作製方法,採集方法,水生昆虫類,チョウ類,トンボ類については科や種レベルでの同定ポイントを身につけることができた。根子岳での植物フェノロジー調査では,調査登山と事後の調査結果の共有を通して,6種の植物(ワレモコウ,ツリガネニンジン,ススキ,マルバダケブキ,シラカバ,ダケカンバ)について,その分布特性や種によってフェノロジーが異なることを理解することができた。5日間の実習を通して「現地でじっくりしっかり生物を観察する」,「生物の形態を比較し,違いを認識する」をTAを含む参加者全員が体験し,自然環境を調べる上での基礎と基本を身に付けることができた。

草原での昆虫採集

大明神滝付近での昆虫採集

採集した昆虫の展翅標本作製

根子岳調査登山

根子岳頂上から四阿山方面側に行った360度眺望エリアでの様子

根子岳登山で得た植物の垂直分布とフェノロジー調査結果の共有

中ノ沢での水生昆虫採集

採集した水生昆虫等の同定作業

●感想
毎年のことであるが,食事,入浴などの準備を自分たちですることなく実習に専念できること,実体顕微鏡,ツルグレン装置,展翅板,大型乾燥機を持参しなくても良いこと,根子岳や中ノ沢など実験所外での活動に対してバスでの送迎などのサポートをしてもらえること,多種の草原生植物の観察や多様性に富んだ昆虫の採集や観察のためのフィールドが宿泊施設や実習室に隣接しているため,野外活動と室内作業をほぼ同時に実施できることなど,実習を行う上で実験所の環境は最適である。この施設で実習が実施できることを毎回本当にありがたく思っている。