意外に複雑なトランスフォーム断層地震

筑波大学山岳科学センター奥脇亮助教らのグループによる研究成果が、プレスリリースされました。

*詳しくはコチラ >> 筑波大学プレスリリース

*掲載雑誌 >> Geophysical Research Letters (DOI: 10.1029/2020GL090899)

大西洋に隣接するカリブ海では、プレート同士が水平にすれ違うトランスフォーム断層が発達し、地震の発生場として知られています。また、このトランスフォーム断層周辺では、水深6000㍍を超える深海底に平坦な海底が広がる特異な地形を呈し、地震の破壊過程との関係が注目されています。
本研究では、2020年1月28日にカリブ海のオリエンテ・トランスフォーム断層で発生したマグニチュード(M)7.7のカリブ海地震(以下2020年カリブ海地震)について、地震波形データを詳しく解析し、その破壊過程を明らかにしました。
その結果、2020年カリブ海地震は、震央の東に位置する断層形状の曲がりによって地震破壊が主に西方向へ進行すること、また、震央の西に位置する断層形状の曲がりによって、その高速破壊が途中で妨害されることがわかりました。さらに、地震波形解析により推定した断層形状の曲がりと断層運動から、オリエンテ・トランスフォーム断層における深く平坦な海底地形は、地震の発生によってさらに拡大した可能性をもつことがわかりました。
本研究成果によって、断層形状や破壊過程が比較的単純だと思われていたトランスフォーム断層地震は、意外な複雑性をもつことがわかりました。他の地域においてもさらなる解析を進めることで、トランスフォーム断層に隠された地震の複雑性が、今後明らかになることが期待されます。また、本研究成果は、地震の破壊過程が海底地形の発達要因に大きく影響したことを示唆しており、地震発生と海洋底進化の関係を理解する上で重要な新知見です。

*本研究は、研究大学強化促進事業 (国際テニュアトラック制度)、JSPS科研費 (19K04030) などの支援で実施されました。