福島大学からの実習利用報告書より
2020年8月17日~21日、福島大学共生システム理工学類の実習が菅平高原実験所で実施されました。提出された実習利用報告の公開許可に基づき、一部抜粋して下記に記載します。
実習名:自然環境調査法(福島大学共生システム理工学類環境システムマネジメント専攻の専攻実践科目、2年生以上が対象)
担当教員:塘 忠顕 教授(福島大学共生システム理工学類)
受講人数:6名(学部学生)
●実習・セミナーの内容
1.中部地方の高原・山岳地域に生育する植物と東北地方の平野部の草地に生育する植物が共通していることを現地での観察を通して学ぶ。
2.昆虫を目(order)レベルで認識できるようになることを目標に、草原、森林(森林土壌を含む)、河川において昆虫を採集し、標本の作製方法、同定方法を学ぶ。
3.森林土壌中に生息する土壌動物の観察を通して、土壌中の食物網の実際を理解する。
4.根子岳を登りながらの植物観察を通して、各種植物の生育環境、分布、フェノロジーの違いを理解する。
●実習の成果
今年度はコロナ禍で密にならないよう注意しての実習であり、例年のような班行動は実施できず、すべての作業が個人ベースでの実習となったが、天候に恵まれ、予定していたプログラムすべてを順調に消化することができた。受講生は草原からアカマツ林入口までの間で観察した植物のうち、頻出した種の名前を覚えることができた。昆虫については、目レベルで昆虫を識別できるようになり、種類に応じた標本の作製方法、特殊な環境に生息している種の採集方法、チョウ類とトンボ類についはその同定ポイントを身につけることができた。根子岳における植物のフェノロジー調査登山と調査後の調査結果の共有を通して、各種植物の分布特性や種によってフェノロジーが異なることを理解することができた。受講生のレポートからは、卒業研究の分野として生物を指向している学生は興味の幅が広がったこと、生物に特に興味がなかった学生は生物分野に関心をもつことができたこと、全員が身の回りの小さな生物に気づくようになったことが読み取れた。
参加者を少数に絞ったとは言え、今年度も5日間の実習を通して「現地でじっくりしっかり生物を観察する」、「生物の形態を比較し、違いを認識する」を参加者全員が体験し、自然環境を調べる上での基本を身につけることができた。
●菅平高原実験所を利用した感想など
食事、入浴などの準備を自分たちですることなく実習に専念できること、実体顕微鏡、ツルグレン装置、展翅板、捕虫網の柄、大型乾燥機などを持参しなくても良いこと、多様性に富んだ生物の採集や観察をするためのフィールドが隣接しているため、野外での活動と室内の作業をほぼ同時に実施できることなど、実習を行う上で実験所の環境は最適である。この施設で実習が実施できることを本当にありがたく思っている。
(写真/塘忠顕教授)