トンボの進化過程と分岐年代を分子系統解析により解明

トンボ類は私たちにもっとも身近な昆虫の一つです。水生の幼虫(ヤゴ)、成虫ともに、昆虫などの小さな動物を捕食する肉食性昆虫です。系統学的には、昆虫類のほとんどを占める翅(はね)を獲得した昆虫「有翅昆虫類」の中で、最初に現われた系統群である「旧翅類」の一群に属します。

トンボ目として、現在6,400種ほどが知られていますが、多くの形態学的研究、分子系統学的研究にもかかわらず、その進化について、系統の分岐や年代などは、よく分かっていませんでした。

本研究では、世界6カ国、11研究機関の研究者18名が共同で、105種のトンボの約3,000の遺伝子についてトランスクリプトーム解析を行い、信頼度の高い系統関係を見いだしました。また、化石証拠を用いて、精度の高い主要群の分岐年代を導きました。

その結果、現生のトンボ目に至る系譜は、古生代石炭紀~二畳紀(約3億年前)に現れ、トンボ目の二大群である均翅亜目(イトトンボ類)と不均翅亜目(ヤンマ類、サナエトンボ類、トンボ類)の放散は、三畳紀(〜約2億年前)から起こったことなどが明らかになりました。

また、トンボ目の出現以降、系統樹に分岐が見られない、長い空白時期が何回かあることが分かり、過去に、数多くの系統が出現・繁栄したものの、現生のトンボ類につながらずに絶滅した可能性が示唆されました。

【題 名】 Evolutionary history and divergence times of Odonata (dragonflies and damselflies) revealed through transcriptomics(トンボの進化の歴史と分岐年代を分子系統解析が明らかにした)

【著者名】 M. Kohli, H. Letsch, C. Greve, O. Béthoux, I. Deregnaucourt, S. Liu, X. Zhou, A. Donath, C. Mayer, L. Podsiadlowski, S. Gunkel, R. Machida, O. Niehuis, J. Rust, T. Wappler, X. YU, B. Misof, J. Ware

【掲載誌】 iScience >> リンク

【掲載日】 2021年10月21日

【DOI】 10.1016/j.isci.2021.103324

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