菅平高原のカオジロショウジョウバエ姉妹種群は生息地や発生のピークを少しずらして共存する

筑波大学の小沼萌(生物学学位プログラム・D3)、佐藤幸恵(山岳科学センター・助教)、澤村京一(生命環境系・准教授)らのグループによる菅平高原実験所のフィールドを活用した研究成果が、このたび発表されました。
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近縁種は共存が難しいと言われています。生態や繁殖行動が似ているため、資源をめぐる競争や繁殖干渉が起こりやすいからです。しかし、同じ場所で複数の近縁種を見ることは少なくありません。どのようにして競争や繁殖干渉を避けて、同じ場所に生息しているのでしょうか?

カオジロショウジョウバエには4種類の極めて近縁な姉妹種群が存在し、筑波大学山岳科学センター・菅平高原実験所のフィールドには、このうち3種類が分布します。これらは、外見は似ているものの、交尾器により判別が可能です。また、このフィールドには、半自然草原、アカマツが優先する若い森、ミズナラが優占する成熟した森など異なる環境が隣接して存在しています。本研究チームは、菅平高原実験所のフィールドのこのような特性を生かし、本姉妹種群の生息状況を調べて、近縁種の共存メカニズムに迫りました。

このフィールドでは、ヤマカオジロショウジョウバエとノハラカオジロショウジョウバエの2種が優占種でした。ヤマカオジロショウジョウバエは若い森に多く、ノハラカオジロショウジョウバエは半自然草原に多い傾向がみられ、発生ピークを迎える時期にもわずかな違いがみられました。これにより、生息地利用パターンや季節消長のちょっとした違いで2種間の接触はある程度抑えられ、同じ場所での生息が可能になっていると考えられました。しかし、同時期、同地点から2種が見つかることもありました。また、極少数ではあるものの、交尾器に異常のある雄がみつかりました。そのため、2種の接触は完全には避けられておらず、雑種形成が起こっている可能性も浮上しました。
今後は、生態だけでなく、遺伝子面でも研究を進めることにより、本姉妹種群における種の分化機構や維持機構の解明に取り組みます。

タイトル:Habitat and seasonal change differ among closely related species in the Drosophila auraria species complex (Diptera: Drosophilidae)(カオジロショウジョウバエ姉妹種群の近縁種間では生息地と季節消長が異なる)

著者名:Onuma M, Sato Y, Sawamura K

掲載誌:Applied Entomology and Zoology

公開日:2022年10月6日