長野県の野生動物保護管理について考える(令和4年度筑波大学山岳科学センターシンポジウム オンライン)

日本有数の山岳県であり、日本海に通じる千曲川水系を有する長野県には自生種・外来種ともに様々な動物が分布しており、大型哺乳類ではツキノワグマ、ニホンジカ、ニホンカモシカなどが生息しています。しかし近年、これらの野生動物が人里あるいは農地に出没し、農林業への被害が深刻化しています。さらに、ニホンジカについては高山帯域への分布拡大が懸念されています。野生動物との遭遇による人身被害事故も年々増加傾向にあり、少子高齢化、人口減少が進む将来の日本の山村地域において、野生動物保護管理は重要な課題です。

本シンポジウムでは、生物学、生態学、行政や実際の野生動物保護管理現場の視点を交え、幅広い視野で長野県の野生動物の保護管理や、人間との共存について考えます。また、山岳科学に関連し、後を絶たない遭難事故について、どのようにすれば回避できるかなどについてもご紹介します。

長野県に関する内容が中心となりますが、県内外からのご参加をお待ちしています。

主催:筑波大学山岳科学センター

共催:長野県環境保全研究所

協力:公益財団法人日本自然保護協会、NPO法人ピッキオ、NPO法人信州ツキノワグマ研究会、日本クマネットワーク、長野県山岳協会、一般財団法人全国山の日協議会

後援:上田市、須坂市、林野庁関東森林管理局、林野庁中部森林管理局、環境省信越自然環境事務所

日程・お申し込み方法

■日時:2023年3月21日(火・祝日)13:00~17:30

■開催形式:Zoomウェビナーによるオンライン配信

■参加費:無料

■申し込み方法:下記のフォームに必要事項を入力し、お申し込みください。

こちら>> 参加申し込みフォーム(Googleフォーム)

※フォーム送信後に自動返信が届かない場合は、アドレスの入力ミスや迷惑メール設定による可能性もありますので、今一度ご確認ください。

■お問い合わせ:当日のプログラムや参加方法に関すること、メールが届かない、といったお問い合わせは下記のフォームからお願いします。

こちら>> お問い合わせ専用フォーム(Googleフォーム)

■連絡先:筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所

〒386-2204長野県上田市菅平高原1278-294 TEL:0268-74-2002

プログラム

13:00-13:05 挨拶/津村 義彦(筑波大学山岳科学センター センター長、教授)

13:05-13:10 趣旨説明/津田 吉晃

13:10-13:35 「古代DNA解析から探る日本の大型絶滅動物の起源と渡来の歴史」瀬川 高弘

13:35-14:10 「全国~地域スケールの集団遺伝学的解析から考えるツキノワグマの歴史」小井土 凜々子

14:10-14:35 「長野県の野生動物事情 ~現在の分布と目指す保護管理~」黒江 美紗子

14:35-14:45 休憩

14:45-15:10 「人里のツキノワグマ」瀧井 暁子

15:10-15:35 「人とクマとの共存 ~森の街 軽井沢 25年間の歩みと課題~」田中 純平

15:35-16:00 「美ヶ原周辺におけるシカの生息分布拡大に伴う地域住民の獣害対策」橋本 操

16:00-16:10 休憩

16:10-16:35 「ニホンジカの低密度管理に向けた取り組み ~群馬県みなかみ町での事例~」武田 裕希子

16:35-17 :00 「長野県の野生動物保護管理に向けて ~山から川まで、そして海~」津田 吉晃

17:00-17:30 質疑応答、総合討論

17:30 閉会

講演内容・講演者紹介

1.「古代DNA解析から探る日本の大型絶滅動物の起源と渡来の歴史」瀬川 高弘(山梨大学総合分析実験センター 講師)

古代DNA解析は古い時代の標本に残された微量のDNAを分析することで、過去の動物や人類、地球環境を知る有力な方法です。本州にかつて生息していたヒグマやオオカミの起源と渡来の歴史や、古代DNA解析の今後の可能性について考えます

2.「全国~地域スケールの集団遺伝学的解析から考えるツキノワグマの歴史」小井土 凜々子(筑波大学大学院理工情報生命学術院博士後期課程)

人間の土地利用の変化の影響で全国的な分布域が広がり、人との軋轢や社会の注目が拡大しているツキノワグマ。全国~長野県での集団遺伝学的研究をもとに、ツキノワグマの歴史、そして個体数管理が地域集団に与える影響について紹介します。

3.「長野県の野生動物事情 ~現在の分布と目指す保護管理~」黒江 美紗子(長野県環境保全研究所 研究員)

長野県は、いきもの豊かな県です。こうした豊かないきものたちの存在は、生息している場所や利用する食物により農業被害や林業被害につながることがあります。農林業被害に関わる動物たちの現在の分布、目指している保護管理を紹介します。

4.「人里のツキノワグマ」瀧井 暁子(信州大学山岳科学研究拠点 助教)

ツキノワグマは、私たちの身近に暮らす野生動物です。長期にわたる個体追跡から明らかになった人里におけるツキノワグマの生態と被害対策、そして信州ツキノワグマ研究会で取り組んでいる普及啓発活動についてお話しします。

5.「人とクマとの共存 ~森の街 軽井沢 25年間の歩みと課題~」田中 純平(NPO法人ピッキオ クマ保護管理ユニットディレクター)

近年、人-クマ双方を取り巻く状況の変化から市街地にもクマが出没し、社会問題となっています。一方、森の街「軽井沢」ではもう10年以上、人が暮らす地域でクマによる人身事故は発生していません。軽井沢での取り組みからクマとの共存について考えます。

6.「美ヶ原周辺におけるシカの生息分布拡大に伴う地域住民の獣害対策」橋本 操(岐阜大学教育学部 准教授)

自然豊かな日本に住む私たちにとって、野生動物との「共生」は昔からの課題です。美ヶ原周辺に住む狩猟者の方々が感じてきた山の中でのシカの生息状況の変化と、シカの生息分布拡大による地域住民の方々の野生動物に対する意識や獣害対策について紹介します。

7.「ニホンジカの低密度管理に向けた取り組み ~群馬県みなかみ町での事例~」武田 裕希子(公益財団法人日本自然保護協会 みなかみ駐在職員)

生物多様性の復元と持続的な地域づくりに取り組んでいる群馬県みなかみの赤谷プロジェクトでは、全国で甚大な被害を及ぼしているニホンジカの爆発的な増加を未然に防ぐため、モニタリング調査や鉱塩による誘引捕獲試験等、効果的な捕獲手法と体制確立を目指して活動しています。

8.「長野県の野生動物保護管理に向けて ~山から川まで、そして海~」津田 吉晃(筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所、八ヶ岳演習林 准教授)

気候変動や人間の土地・森林利用の変化などにより、長野県内の動物の分布は現在進行形で変化しています。外来種問題もあります。人口減少が進む日本で、これら動物を保護管理するのにはどのような分野融合型研究をすべきか、国内外の動向も踏まえて紹介します。

オーガナイザー/津田 吉晃

【2023.3.14追記】2023年3月14日発行の信濃毎日新聞(東信版)に、このシンポジウムについての記事が掲載されました。

こちら>> 信州の野生動物の今を知ろう 21日にオンラインシンポ 筑波大(信濃毎日新聞デジタル)