ナチュラリスト向け地衣類勉強会を開催

2023年11月11日、菅平高原実験所にて、地衣類勉強会を開催しました。

菅平高原実験所では、ボランティアスタッフ「ナチュラリスト」らと一緒に、昨年から毎月2回、標本の整理を進めています。特に今年度は菌類と地衣類標本整備を目標とし、菌類については菅平菌類相調査を毎月実施しています。初夏から秋にかけて出川洋介准教授とともにフィールドをまわり、これまでにたくさんの菌類のデータを得ることができました。

そこで、落葉して樹皮が目立つようになったこの時期、地衣類についても知識を深めようと、ナチュラリストとナチュラリスト基礎講座受講生向けに勉強会を実施することにしました。講師として信州大学農学部助教の升本宙先生をお招きし、「『地衣類』という生き物の話」と題してご講演いただきました。

地衣類について初めて学ぶ参加者が多いなか、升本先生から、まずどのようなものが地衣類なのか、どこで見られるのか、菌類の分類と構造の違い、菌類と藻類の関係など、丁寧な解説が行われました。3時間を超えるご講演となりましたが、専門用語をひとつずつ説明いただき、たくさんのきれいな写真もあって、参加者はうなづいたりメモをとったりしながら聞いていました。

また、会場の一角には升本先生が事前に地衣類コーナーを作ってくださいました。国内外の地衣類の図鑑に加え、実体顕微鏡での観察、ブラックライトを当てると蛍光を発する地衣類、水を吹きかけると色が変わる地衣類、先日の菅平生き物標本展の展示物などが置かれており、休憩時間に参加者が訪れて楽しんでいました。

さらに、講演後は野外に出て、自然の中の地衣類を実際に見て回りました。石の壁や樹皮についた地衣類をルーペで観察し、いろいろな種類の地衣類を見たり、講演で習った子嚢盤(しのうばん)や埋没した子嚢殻(しのうかく)を確認したりしました。

この日の参加者はナチュラリスト15名、基礎講座受講生8名、筑波大関係者2名、その他2名の合計27名でした。参加者からは「大変勉強になった」「地衣類を身近に感じられるようになった」といった声が寄せられました。

講師の升本宙先生(信州大学農学部 助教)
講師の升本宙先生(信州大学農学部 助教)
たくさんの写真を交えながらの解説
たくさんの写真を交えながらの解説
地衣類コーナー
地衣類コーナー
実体顕微鏡で担子地衣類や、藍藻と共生している地衣類を観察。中央右は升本先生。
実体顕微鏡で担子地衣類や、藍藻と共生している地衣類を観察。中央右は升本先生。
興味深そうに見つめるナチュラリスト
興味深そうに見つめるナチュラリスト
ブラックライト※(紫外線)を当てると蛍光になる地衣類も(※ブラックライトを使う際は光源を直接見ないでください)
ブラックライト※(紫外線)を当てると蛍光になる地衣類も(※ブラックライトを使う際は光源を直接見ないでください)
野外で石の壁についた地衣類を観察
野外で石の壁についた地衣類を観察
ハナゴケやカラクサゴケなどたくさんの地衣類が見られた
ハナゴケやカラクサゴケなどたくさんの地衣類が見られた
升本先生(奥)が野外でも詳しく解説
升本先生(奥)が野外でも詳しく解説
冷たい風のなか、説明を聞く参加者たち
冷たい風のなか、説明を聞く参加者たち

この勉強会は昨年から開始した「みんなの標本庫」計画の一環で、今年度は日本科学協会の2023年度笹川科学研究助成「一般市民との協働による生涯学習の場『みんなの標本庫』での菌類及び地衣類標本整備に向けた手法開発」により遂行しています。