開催報告|サイエンスカフェ「変形菌(粘菌)を観察しよう」

2024年9月22日、上田市マルチメディア情報センターにて、サイエンスカフェ「変形菌(粘菌)を観察しよう」が開催されました。

「ネンキン」と聞くと、多くの人が「年金」を思い浮かべると思いますが、漢字で「粘菌」と書く通り、アメーバになったりキノコのようになったりする不思議な生き物です。昭和天皇や明治の博物学者南方熊楠が研究していましたが、最近では「粘菌が迷路を解く!」という研究がイグノーベル賞を受賞して世間でも話題になったことがあります。

子供たちから大人まで全世代に人気のテーマで、保育園児2名、小学生14名、高校生4名、さらに大人は付き添い込みで16名という、たくさんの方々が参加されました。

講師は筑波大学大学院生(博士課程前期生物学学位プログラム 2年)の上辰俊広さんで、わかりやすく楽しい解説に、皆が一気に粘菌の世界に引き込まれました。菅平ナチュラリストの会の北澤さん、杉村さん、竹内さん、基礎講座生の堀内さんが応援に来てくださり、センターの尾崎さんとともに観察会を補助してくださりました。

上辰さんから粘菌についての説明を受けたのち、実際に上辰さんが採集された標本(キノコのような粘菌が生えた倒木の断片を木工用ボンドで台紙に貼り付け、マッチ箱のような標本箱に収納)を見せてもらい、よく覚えてから、フィールドに出ました。

センター周辺は三郎川親水公園として、気持ちのよい雑木林が広がっています。ところどころに切って積み上げられたマツの倒木や、切株などをじっくり観察すると、そこかしこで「粘菌が見つかった!」と歓声があがりました。特に子供さんたちは目がよく、次々と粘菌を発見されていて素晴らしかったです! なかには粘菌そっくりのキノコや不思議な虫の卵もありました。また、秋のはじめで、他のキノコもたくさん見かけられました。

建物に戻ってから、2種類の顕微鏡を使って粘菌を観察しました。実体顕微鏡で粘菌を拡大して観察すると、ミニチュアのキノコのような色とりどりの面白い形をしています。これを、宝石箱のような紙箱に収めて、標本を作り上辰さんに名前を教えてもらいました。細かい仕切りがあるお菓子の空き箱を利用して、たくさんの種の粘菌の素敵な一覧標本を作っておられる参加者の方もいました。

また、光学顕顕微鏡(生物顕微鏡)で、上辰さんが事前に培養してきてくださったイタモジホコリの変形体を観察しました。寒天培地の上で、黄色い血管?ペンキ?のように見えるドロドロしたアメーバをのぞいてみると、「原形質流動」という川の流れのような細胞の活動が観察できました。

ところで、センターの移転が決まり、これまで毎年10年近く続けて開催してきた粘菌やキノコのサイエンスカフェは、今回が最後の開催となりました。センターの尾崎さん、長らくお世話になり有難うございました。また、なんらかのかたちで、三郎川親水公園あるいは別の場所で粘菌やキノコの市民観察会を開催できたらと考えておりますので、みなさんご期待ください。

(文・出川洋介)

講師の上辰俊広さん(左端)による説明
講師の上辰俊広さん(左端)による説明
フィールドでの観察
フィールドでの観察
皆で粘菌探し
皆で粘菌探し
大人も子供も顕微鏡観察
大人も子供も顕微鏡観察