世界最寒地(上高地)に生きるニホンザルの独特な越冬戦略:魚類や水生昆虫類など、河川に生息する動物に依存する世界初の新知見
2021.12.1
信州大学の Alexander M. MILNER(特別招へい教授)、東城幸治(教授)、筑波大学の竹中將起(生命環境系 特任助教)らのグループによる研究成果が、このたびプレスリリースされました。
研究成果のポイント
● ニホンザルは世界の猿類(人類以外の霊長類)の中で最も寒い地域に生息する種であり、中でも上高地や志賀高原の高標高域に暮らす集団が、世界最寒地の集団とされる(北海道には生息せず、最北は下北半島の集団であるが、気温としては上高地や志賀高原の方が低い)。
● ニホンザルの集団成立には、最も厳しい冬季を生き抜くことができるかどうかに左右され、集団サイズ(集団の密度)は冬季の餌資源により決まる。
● 2017-2019 年の冬季3シーズンにかけて、上高地のニホンザルの38 糞サンプル(同一個体の糞サンプルの重複を回避するように採取した糞サンプル)の DNA を網羅的に調べるメタゲノム解析を実施したところ、サケ科魚類や水生昆虫類(カワゲラ類やガガンボ類の幼虫:成虫が存在しない冬季の幼虫)などの DNA が検出された。すなわち、厳冬季における栄養源として、河川に生息する動物に依存している実態が究明された。
● 猿類が河川に生息する魚類を捕食すること自体が世界で初めての報告であり、水生昆虫類を餌として利用していることに関しても、糞(排泄物)のゲノム解析による直接的な証拠を得ることができた。加えて、餌として利用している水生昆虫種群の特定に結びついた研究も世界初の成果となる。
この研究成果に関連する映像はこちら>> 水生昆虫を採取するニホンザル(筑波大学山岳科学センターチャンネル)
【題名】Winter diet of Japanese macaques from Chubu Sangaku National Park, Japan incorporates freshwater biota(世界最寒地(上高地)に生きるニホンザルの独特な越冬戦略:魚類や水生昆虫類など、河川に生息する動物に依存する世界初の新知見)
【著者名】Alexander M. MILNER, Susanna A. WOOD, Catherine DOCHERTY, Laura BIESSY, Masaki TAKENAKA, Koji TOJO
【掲載誌】Scientific Reports >> リンク
【掲載日】2021 年11 月29 日(イギリス現地時刻10 時)
【DOI】10.1038/s41598-021-01972-2
詳細はこちら>> プレスリリース
関連リンク>> 世界最寒地(上高地)に生きるニホンザルの独特な越冬戦略:魚類や水生昆虫類など、河川に生息する動物に依存する世界初の新知見(筑波大学プレスリリース)
関連リンク>> 生物学コース東城幸治教授を含む研究グループが,上高地のニホンザル集団に関する独特な越冬戦略に関する知見を見出しました。(信州大学プレスリリース)